富士通が決算会見で成長する事業領域について説明した。IT分野をはじめ日本企業は米国企業に比べて決算会見での成長事業や注力事業の説明がおとなしいと、かねがね思っていたが、富士通がその“殻”を少し破ってくれた感じだ。ぜひ他の日本企業も続いてほしい。
富士通が主力事業における成長領域の実績を開示
富士通が10月27日にオンライン形式で開いた2020年度(2021年3月期)第2四半期(2020年7〜9月)決算の説明会で、主力のテクノロジーソリューション事業の売上高を「For Growth(成長領域)」と「For Stability(安定領域)」に分けて開示した。
富士通 取締役執行役員専務/CFOの磯部武司氏(2020年7月30日オンライン会見時の写真)
会見に臨んだ同社 取締役執行役員専務/CFO(最高財務責任者)の磯部武司氏によると、For Growthは「デジタル技術を活用し、お客さまの事業の変革と成長に貢献する事業領域。これを成長分野と位置付け、規模と収益性の両方を拡大していく」、For Stabilityは「システムの保守や運用といった従来型ITとして、お客さまのIT基盤の安定稼働への貢献と品質向上に取り組む事業領域。これについては効率性を追求し、収益性を高めていく」とのことだ(写真1)。
こうした分け方で、同社が今回初めて開示したのが図1である。この図によると、テクノロジーソリューション事業の売上高におけるFor GrowthとFor Stabilityの比率はおよそ3対7というのが現状だが、今後はFor Growthの割合が増加していく形になる。
図1:テクノロジーソリューション事業の売上高を「For Growth」と「For Stability」に分けて開示(出典:富士通)
実は、この分け方は同社代表取締役社長の時田隆仁氏が7月30日に開いた経営方針の会見で、市場認識として図2を示しながら、「今後成長していくDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションの事業領域をFor Growth、従来型ITの事業領域をFor Stabilityと定めた」と明言したのが起点となっている。
図2:富士通代表取締役社長の時田隆仁氏が7月30日の会見で示した市場認識(出典:富士通)
ちなみに、テクノロジーソリューション事業におけるFor GrowthとFor Stabilityの構成要素は、表1に示す通りだ。さらに同社では、テクノロジーソリューション事業のサブセグメントごとにもFor GrowthとFor Stabilityの実績を開示している。
表1:テクノロジーソリューション事業におけるFor GrowthとFor Stabilityの構成要素(出典:富士通)