本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏と、日本マイクロソフト マーケティング&オペレーション部門Azureビジネス本部プロダクトマーケティング&テクノロジ部 部長の田中啓之氏の発言を紹介する。
「新しい社会における企業やビジネスのあり方を“リイマジン”する時が来ている」
(富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏)
富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏
富士通が10月14日に開幕した自社イベント「Fujitsu ActivateNow」で、時田氏がオープンニングキーノートでスピーチを行った。冒頭の発言はそのスピーチの中で強調したメッセージである。リイマジンは「再構想」の意味である。
このイベントは2019年まで「富士通フォーラム」としてリアルに開催していたものだが、今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンライン形式となった。12月中旬まで全てのセッションをオンデマンドで配信している。
時田氏のスピーチは幅広い話題に及んだが、本稿ではその中から筆者が印象強く感じた話を2つ取り上げたい。
1つは、「レジリエンス」がキーワードの話。同氏はレジリエンスを「変化への対応力」とし、次のように語った。
「コロナ禍において、世界各地で多くの企業や組織がさまざまな困難に立ち向かっている。この状況がいつまで続くのか、確かなことは誰も言えない。次にまた新たな危機が訪れる可能性も否定できない。私たちはこれまでのような過去の積み重ねで予測してきた未来ではなく、不確実で非連続な未来に向かっているのだ」
さらに、こう続けた。
「この不確実な世界においてビジネスを持続するためには、レジリエンスを身につけることが不可欠だ。また、今回特徴的だったのは、世界中で生活やビジネスにおいてデジタル化が急激に広がったことだ。多くの企業や組織がデジタル技術を活用して、レジリエンス強化への取り組みを始めている」
もう1つは、リイマジンをキーワードにした話である。
「今回のコロナによる変化は、これまでの慣習や考え方をリセットして、生活様式やビジネスのあり方を全く新しい形にシフトしていく機会でもあると、私は捉えている。もう元に戻ることはない。そこで、当社自身も企業のあり方や働き方を新たな視点で見つめ直し、具体的な取り組みに着手している。例えば、日本においてはリモートワークを通常の勤務形態とする『ワークライフシフト』という取り組みを開始した。新たな働き方の実現を目指し、制度やカルチャーの変革に取り組んでいる。このように今、新しい社会における企業やビジネスのあり方をリイマジンする時が来ている」(図参照)。
ワークライフシフトの3要素(出典:富士通)
冒頭の発言は、この話の最後の部分をピックアップしたものである。時田氏のスピーチのキーワードは上記のようにレジリエンスとリイマジンだ。この2つは、アフターコロナに向けて核心的なテーマとなりそうだ。