ガートナー ジャパンは11月13日、日本でのIT支出が2024年に32兆円に達するとの予測を発表した。2020年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で前年比2.6%減だが、2021年は3.2%増と反転を予想。2019~2024年の年平均成長率(CAGR)を2.6%、2024年の支出規模を32兆円と予測した。
同社は、足下のIT支出について、特にコロナ禍で深刻な影響を受ける業種に卸売(CAGR:0.8%)、製造/天然資源(1.3%)、運輸(1.5%)を挙げる。一方で増加率の高い業種は教育(4.1%)や銀行/証券(3.7%)、通信/放送/サービス(3.4%)、政府官公庁/地方自治体(3.3%)としている。
予測についてアナリスト アソシエイト プリンシパルの成澤理香氏は、パンデミックで公衆衛生、社会サービス、教育、研究、経済的持続可能性へのIT投資が優先傾向にあると分析。日本では、特にIT予算が乏しかった教育分野における学習の継続性が問題になり、政府の「GIGAスクール構想」も前倒しで実施されていることから、同分野の2020年のIT支出は前年比7.6%が見込まれるという。しかし、IT製品の供給遅れや現場のスキル不足などが課題だとした。
製造/天然資源は、2019年にIT支出が最多だったものの2020年は8.8%減とし、業種別IT支出に占める比率も2ポイント低下して22%になるとしている。需要が世界規模で減少し、サプライチェーン(供給網)の混乱による生産計画の遅れなども影響。キャッシュの確保が優先され、コスト削減や短期に高い効果を得る案件以外は中断・延期にある。IT支出面では、IoT、AI(人工知能)、ロボット、画像認識、クラウドなどを活用した自動化や省力化が鍵になるという。
加えて成澤氏は、短期的な事業継続から中長期的な事業の維持・回復にユーザーの視点が変化しており、「クラウド活用によるコスト最適化が加速する一方、人事や承認プロセスなどの制度変更も踏まえたシステム再構築や、サプライチェーンの見直し、対面ビジネス/サービスのオンライン型への移行、ロボットやリモート監視といった非接触型システムの採用など、今後は企業の在り方そのものが問われる投資へとシフトすることが予想される」とコメントしている。
日本の業種別IT支出予測、2020~2024年(億円)、出典:ガートナー(2020年11月)