Linuxの生みの親であるLinux Torvalds氏は最近、Real World Technologiesのフォーラムで、「M1」を搭載したAppleの新型ノートブックについてどう思うかという質問を受けた。Torvalds氏の答えは、「Linuxが動きさえすれば、絶対に手に入れていただろう」というものだった。
何が問題なのか、不思議に思う人もいるかもしれない。Linuxは、「80386」などから始まって、AppleのM1チップのベースになっているArmまで、事実上、地球上に出回っているさまざまなプロセッサーで動作するはずだと。それは間違いでないのだが、コンピューターを動かすには、プロセッサー以外のものも必要になる。
6月に開催されたThe Linux Foundationの「Open Source Summit」で、VMwareの最高オープンソース責任者Dirk Hohndel氏はTorvalds氏に対し、Appleが「Mac」製品をArmプロセッサーベースに切り換えようとしているため、数年後になるかもしれないが「CPUの序列に変化が訪れる」のではないかと尋ねた。Torvalds氏はそうなるかもしれないと考えている。また同氏は、開発に利用できるArmハードウェアを見つけることの難しさに言及し、「そういったハードウェアは存在するが、今のところx86に実際に対抗できるレベルに達していない」と述べていた。
Torvalds氏は、M1を搭載した新型MacでもLinuxが適切に動くようにしたいと考えている。一方で同氏は、この件について「Linuxが動くArmのノートPCをずっと待っていた。OSを除けば、新しい『Air』は完璧だろう。だが私にはそれをいじる時間はないし、助けてくれない企業と戦う気も起きない」と述べている。
Torvalds氏は、独占インタビューの中で、LinuxをM1版Macに移植しようとしない理由を説明した。「私にとって、M1の一番の問題はGPUやその他の周辺デバイスだ。Appleが情報を開示してくれない限り、それらがLinuxでサポートされることはなく、そのことが障害になる可能性が高いからだ」
Appleとオープンソースの間には、長年愛憎相半ばする関係が続いている。Appleが、オープンソース開発者が同社のデバイスを最大限に活用するために必要な、ハードウェアの技術的な詳細を公開したことはない。
M1のハードウェアに関する情報をもっと公開してほしいと考えているのは、Torvalds氏だけではないだろう。「Google Chrome」のチームも、M1搭載Macをサポートするバージョンの「Chrome」がクラッシュするバグに悩まされた。
Torvalds氏は、Appleがチップセットに関する情報を公開する可能性は低いことは認めつつ、それでも「いつだって希望はある」と語っている。
この件について、ボールはApple側にあるだろう。AppleがMacでLinuxを使えるようにしたければ(多くのLinux開発者やパワーユーザーはそれを望んでいる)、ただハードウェアの詳細やドライバーを公開するだけでいい。後はLinuxカーネルの開発チームが面倒を見てくれるはずだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。