ノースカロライナ州アッシュビルにある筆者のホームオフィスは現在、300Mbpsでインターネットに接続されている。一方、筆者が子ども時代を過ごした家のあるウェストバージニア州カルフーン郡(筆者はその地に今も家族の土地を保有している)では、Kbps単位のDSL回線速度が得られればよい方だ。念のために記しておくと、1Kbpsで転送できるデータ量は1秒あたり1キロビットだ。
衛星インターネットに関する最近の調査で、貧弱なインターネットアクセスが田舎への移住をためらう原因になっているとした回答者が36%もいたのも無理はない。McKinsey Center for Advanced ConnectivityのシニアパートナーAlexandre Menard氏は米CNETのEric Mack記者に対して「先進国の市場であっても、人口の10~20%は依然として(中略)平均的なDSL接続、あるいは品質の低い3G接続でインターネットにアクセスしているため、動画など、高い接続性能を要する利用は簡単にはいかない」と述べた。在宅勤務は数千万にものぼる人々にとって夢物語でしかないが、インターネットに関する彼らの祈りに応えられるのは頭上、すなわちSpaceXの衛星インターネット網である「Starlink」であるかもしれない。
Starlinkの最近のベータテストでは、速度が50~150Mb/s、レイテンシーは20~40ミリ秒という、約束通りの性能が実現されている。
このサービスを利用するには、Starlinkの「Better than Nothing」(ないよりはまし)ベータプログラムへの参加が必要となる。参加が認められれば、499ドル(約5万2000円)でディッシュアンテナとモデム/ルーターを入手し、月額99ドル(約1万円)の利用料金を支払うことになる。
それだけの価値があるだろうか?Starlinkのベータテスターらはそう考えている。Starlinkは彼らが地上のISPで手に入れられるよりも速い回線を提供してくれる。Starlinkのエンジニアらは最近、RedditのAMA(Ask Me Anything:質問受け付けます)スレッドでユーザーや批評家、ファンたちからの質問に回答するとともに、同サービスの裏表を語ってくれた。
まず今のところ、ベータテストへの参加を許された場合には、軌道傾斜角53度(北緯と南緯)で周回する衛星を見通せる場所にアンテナを設置する必要がある。これは「Starlinkのディッシュアンテナと宇宙空間の衛星との通信が、アンテナと衛星の間に存在する『細いビーム』を媒体として成り立っていると考える必要がある」ためだ。また、衛星はあっという間に頭上を通り過ぎるため、アンテナと衛星の間に木の枝や柱があると接続が途切れてしまう」。この点を念頭に置き、Starlinkはソフトウェア機能の改善に向けて取り組んでいる。そしてもちろんながら、Starlinkの衛星コンステレーションの規模が大きくなるとともに、稼働中の衛星を見つけられる空間も広がっていく。