NTTとSAPは12月7日、グローバルな戦略的提携関係を拡充すると発表した。顧客やサプライヤーを含む全方位的なパートナーシップを構築し、デジタルトランスフォーメーション(DX)とイノベーション促進の支援を目指すとしている。
提携強化について覚書を交わしたNTT 社長の澤田純氏(左)とSAP 最高経営責任者のChristian Klein氏
両社は30年以上に渡る協業を通じて、これまでハイブリッドITインフラやセキュリティ、アプリケーション、プラットフォーム、マネージドサービスまでのさまざまなレイヤーで統合ソリューションを展開し、グローバルに企業のビジネスニーズを支援してきたと説明する。
今回の戦略的提携の拡大では、デジタルで接続されたグローバルなバリューチェーンを構築し、「リモートワールドやコネクテッドワールドを支援するソリューションを提供する」と表明。SAPのIoTやエッジコンピューティング、機械学習を含む技術と、NTTのICTやハイブリッドクラウドの技術力を組み合わせ、“コネクテッドバリューチェーンソリューション”を共同で開発、マーケティングを行う。顧客やサプライヤー、小売業者、製造業者、配送業者に渡る統一化、自動化された連携を可能にし、「デジタルコネクテッドバリューチェーンはパフォーマンスを改善し、顧客体験を変革するもの。新たなビジネスモデルの構築が可能になる」としている。
また、データへのリアルタイムなアクセスと分析を可能にし、企業が情報を活用してサプライチェーン全体の俊敏性と弾力性を高められるようにする。主には下記を掲げている。
- 「コネクテッドサイト」により、拠点内の備品資産の追跡、従業員の安全性向上、設備の信頼性向上および業務効率化が可能になる
- 「コネクテッドモビリティー」は、移動中の資産を追跡して信頼性の高い物流と安全な輸送を実現する
- 「コネクテッドプロダクト」は、製品トレーサビリティーにより、コンテナーから個々の製品に至るまでのレベルでエンドツーエンドのサプライチェーンを可視化する
協業領域での強み
同日夜に記者会見したNTT 代表取締役社長の澤田純氏は、「コロナ禍により世界が厳しさに直面する中、NTTは全ての人々、コミュニティー、企業がつながるスマート世界を実現するビジョンを掲げる。SAPを戦略的パートナーとすることで、NTTのグローバルな産業別ソリューション、システムインテグレーション、ICTインフラ、マルチハイブリッドクラウド、セキュリティ、マネージドサービスと、SAPのアプリケーションとテクノロジーを組み合わせ、われわれのイノベーションを加速できる。また、両社の共同マーケティングの取り組みを通じて最適化されたサービスを提供していく」とコメントした。
SAP 最高経営責任者(CEO)のChristian Klein氏は、「世界的な混乱の中で企業はビジネスとプロセスを再構築し、俊敏性と柔軟性を実現しなければならない。NTTとの新たな提携により、これまでにない形で両社が協力し、顧客の組織間だけでなく、ネットワーク内においても事業の変革ができるものと期待している。われわれの顧客の成功に向けたソリューションやサービスをベースに、NTTとSAPは世界中の企業が弾力性や俊敏性を得られるよう支援していく」と表明した。
NTTは、グループで2019年にSAP SuccessFactorsなどを導入し、SAPによればこの導入規模は世界的にも最大級という。加えてNTTは、ビジネスプロセスの標準化やS/4HANAおよびAribaを活用したデータ駆動型の業務遂行体制を整備し、事業運営の自動化やグループ運営の高度化を実現していくとする。SAPは、グローバルサプライヤーの1つとしてNTTを選定し、これまでに買収した複数企業のネットワークの簡素化、効率化を促進することで、運用コストを削減する予定だとしている。2021年以降に、両社で具体的なソリューションの提供に向けて内容の検討や概念実証(PoC)に取り組んでいくという。