世界中の人々に対して健康被害をもたらす新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって世界中の企業が大きな痛手を被ったといっても、世の中の動きが完全に停止したわけではない。企業はその規模を問わず、クリエイティブなソリューションを見出すために前向きに取り組んだ。その結果、未来を見据えて適応性やクリエイティビティー、レジリエンスを高めるというトレンドがさらに加速された。多くの企業にとってこれは、新たなデジタルエクスペリエンスの構築を後押しするためのDevOpsプラクティスの実践を加速させることを意味していた。しかしこうした動きは従来の枠組みにとどまらない。企業は、サプライチェーンやワークフォース、安全に関する規制が変化する中で、この種のプラクティスを自社内のより広い範囲に展開する必要があったのだ。
筆者はここ半年、新たな運用モデルに関する大きなリサーチプロジェクトに取り組んでいる。その運用モデルとは、組織が適応性やクリエイティビティー、レジリエンスを高めるアプローチに向けて変革を推進する中で台頭してきているものだ。筆者が取り組んでいるプロジェクトでは、20人を超えるイノベーションの思想的リーダーや、最高イノベーション責任者、素晴らしい運用ストラテジストへのインタビューも実施した。こういったインタビュー対象の中にはDeloitteやNationwide Mutual Insurance、Target、Bank of America、Best Buyといった大手企業に籍を置く人たちが含まれている。これは新たなリサーチへとつながり、困難な時期にあってはクリエイティブな対応が必要となるという点がその中で明確になった。また、パンデミックという緊急事態での迅速な方向転換や迅速な対応については複数の人物が言及した。その中には、永続的な製品開発/運用チームを最近設置したある大手銀行が、企業救済プログラム向けに最低限の機能を備えた製品を数日間で調達できたという事例もあった。このようなイノベーションを醸成するには、企業内に存在するサイロの完全な統合が必要となる。そしてDevOpsのライフサイクルを表現した有名な8の字の図は、こうした統合に向けたテンプレートを提供してくれる。
こうした迅速なイノベーションサイクルは、先行きの見えない時代に必要なクリエイティブな試行を実現する上で不可欠といえる。しかし、イノベーションを支援できない、あるいは継続的な改善さえ満足に支援できない旧来型のアプローチに拘泥し続けている組織があまりにも多く存在している。ある上級マネジメントは「われわれは自社の中核製品におけるイノベーションエンジンだが、社内における仕事の方法をイノベーションするというのはわれわれのDNAに存在していない」と述べた。