前回は、ローコード開発の効果とその要因を分析し、ローコード開発を推進する前にあらかじめ考慮しておくべき点を考察した。考慮点を理解しておけば、ローコード開発を推進するうえで課題が発生した時に羅針盤として、より的確にローコード開発を広めることができるのではないだろうか。
最終回の今回は、ローコード開発する人材をどのように確保するか、そしてローコード開発をどのようなステップで推進するかを考察する。
ローコード開発人材をどのように確保するか
ローコード開発人材を確保するうえで、二つの方向性が考えられる。一つは外部から調達する、もう一つは内部で人材を育成する、である。
外部から調達する
外部から人材を調達するということは、ローコード開発するIT企業に開発を委託、またはIT企業の技術支援を得ながら開発を推進するということである。第3回の事例1で紹介した、業務部門主導で2カ月という短期間で新規システムを完成させた事例では、IT企業がローコードツールを利用して実開発を担当し、システム開発を完成させた。
企業、団体の多くは、システム開発をIT企業に委託して完成させる場合が非常に多いのではないだろうか。IT企業への委託でのローコード開発人材の調達は、一番オーソドックスな方法である。
ここで考慮すべきことは、IT企業が抱えるローコード開発人材の数である。ローコード開発する企業が増えるにつれ、IT企業へのローコード開発案件は増加し、IT企業が抱えるローコード開発人材を取り合う結果となる。IT企業が抱えるローコード開発人材数はこれから増えると思われる一方で、経済産業省の調査(PDF)によると、IT人材は2020年で30万人、2025年で36万人の需給ギャップが発生すると見込まれている。即ち、IT人材の絶対数が不足している中で、ローコード開発人材を外部から調達していくことは、想像以上に難易度が高い可能性がある。
内部で人材を育成する
外部のIT人材不足に対応するため、企業、団体の内部の人材を、ローコード人材として育成する方法も考えられる。ローコード開発ツールのスキル習得ハードルは、プログラミングをいちから覚えて開発するよりも格段に低くなる。
スキルを習得する方法は、二つの方法が考えられる。
- 研修、スキルトランスファー(業務や知識の引き継ぎ)を受ける
- 自己学習で習得する
第3回で紹介した建設IT部門がローコード開発スキルを学んでスキルを育成した事例では、ローコード開発ツールの基礎講習を3日間受講し、その後IT企業の拠点に赴き、職場内訓練(OJT)でスキルを身に付けた。身に付けたスキル向上のために、IT企業からの継続的な支援サービスでスキルを補完することも有効である。
また、金融業界の業務支援部門だけで1年で24システムを開発した事例では、今まで開発に活用していたExcelマクロ機能の知識があれば理解できるローコードツールを自己学習して開発を実践している。
ここで考慮すべきことは、いずれの場合も一定の育成期間が必要ということである。研修を受けたらすぐに開発を実施できるわけではなく、OJTを通じた一定のスキル強化期間が必要である。