オンライン化の波はスクール事業にも
(編集部より:本記事はメディアシークによる寄稿です。)
新型コロナウイルスの感染拡大でスクール事業の収益が激減する中、レッスン形態を対面からオンラインへ切り替える中小事業者が急増しています。その理由はもちろん経営を維持するためですが、それだけにとどまらず、オンライン化を商圏拡大のチャンスと見ている事業者も少なくありません。
デザインワン・ジャパンが運営する中小事業者の調査/研究開発部門「エキテン総研」の調査によると、オンラインレッスンを実施しているスクール事業者は、2020年夏の時点で全体(n=1545)の26%でした。実施の理由については、感染症の予防に次ぎ、半数以上が「商圏を広げるため」と回答(図1)。また、オンライン化して良かったこととして「生徒のつなぎとめに成功した」などが挙がっています(図2)。
図1:半数以上の事業者が「商圏を広げるため」と回答。オンラインレッスンに新規生徒の獲得を期待する事業者は多い(出典:メディアシーク)
図2:オンライン化により、多くの事業者が顧客のつなぎとめに成功。「商圏が広がった」「顧客層が広がった」という声も目立つ(出典:メディアシーク)
オンライン化で商圏の拡大が期待できるのは、生徒が教室に通う必要がなくなるからです。それはつまり、インターネット環境さえ整っていれば、物理的な距離に関係なくレッスンを受けられるということ。従来なら商圏の外にいた生徒を獲得できる可能性が、オンラインレッスンにはあります。
またオンラインレッスンの場合、教室を借りる賃料が発生しないので、光熱費などの経費を抑えることが可能となります。つまり、レッスン料を安く設定できるということです。対面型に比べてレッスン料が割安となれば、集客力が向上するのは言うまでもありません。また、オンラインレッスンでは教室の予約/手配が必要ないため、講師の時間が許せばレッスンの回数を増やすことも考えられるでしょう。近年はEducation(教育)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語「EdTech(エドテック)」が注目されており、都会と地方といった教育格差の解消、講師の負担軽減などが期待されています。
加えて、事業者側から見たオンライン化の大きなメリットとして、レッスンの配信スケジュール、予約/キャンセルの管理、決済など、スクールの運営に必要な業務をデジタルで一元管理できることがあります(図3)。「マイクラスリモート」「ストリートアカデミー」「STORES (ストアーズ)」など、スクール事業者向けのさまざまなツールやネットサービスが提供されているので、オンラインレッスンの開講に当たっては、それらの導入も検討することをおすすめします。
図3:顧客管理システムを基に、「Zoom」との連携、生徒への連絡/課金など、レッスン配信に伴う業務を自動化するマイクラスリモート(出典:メディアシーク)
オンライン化すべきスクール事業は?
とはいえ、全てのスクール事業がオンライン化に適しているわけではありません。
スクール事業は、学習塾や資格試験対策、英会話などの座学系と、ヨガやフィットネス、各種スポーツのような実技系に大きく分けることができます。座学系スクールは全般的にオンライン化に適していますが、野球やサッカー、スイミングのように施設や器具、チームワークが必要になる実技系のオンライン化は難しいと言わざるを得ません。ただし同じ実技系でも、個人でできる筋力トレーニングなら自宅で手軽に始められます。実際、コロナ禍で運動不足が懸念されている状況では、ヨガやフィットネスなどのオンラインレッスンが人気になっています。
またレッスン形態は、座学/実技系どちらも、個人レッスンと団体レッスンに分かれます。個人レッスンは生徒一人ひとりに応じた細やかな指導ができる半面、レッスン料を高めに設定せざるを得ないでしょう。これに対し団体レッスンは、レッスン料を割安にできる一方で、個人に目が届きにくくなるという課題があります。団体レッスンでは、一定の時間ごとに質問のための時間を取るなど、生徒と講師のコミュニケーションを工夫するといいでしょう。