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リモートワークで長時間労働が多発する職場の「残念な共通項」 - (page 2)

喜島忠典 (クニエ)

2021-04-22 07:15

リモートで長時間労働が多発する職場の共通項

 筆者がこれまで関わってきたプロジェクトの実績から考えると、リモートワークで長時間労働が起きている職場には「残念な共通項」がある。この共通項こそ、IT化によって実現されるべきワークスタイルとかみ合わない「古い働き方」の典型例なのだが、今回はその中でも代表的なものを3つ紹介しよう。

1. 仕事の責任範囲が曖昧な職場

 チームワークや現場主義の名のもと、各人の仕事の線引きや意思決定の所在が不明確な組織(もしくは、一極集中している組織)では、自然と自分に関係の少ない仕事にもダラダラと付き合わなければならない。その結果、不幸にも朝から晩までウェブ会議に参加せざるを得なくなる人を生んでしまっている。

 面倒なのは、自分たちがそのような組織であるという自覚を持ちにくいことだ。そういう組織に限って「我々は、各人の仕事の担当は明確に決めています」と言うのだが、実際は各人の担当以外に「みんなで臨機応変に対応する突発業務」が数多く発生し、文字通りみんなで対応していたり、誰かに押し付けたりして乗り切っている。それこそが責任範囲が曖昧なことの典型だと気付くことが、最初の一歩だ。

2. 仕事の成果、進捗確認ができない職場

 これは「仕事を終わらせられない職場」と言い換えてもいい。ここまでやればOKというイメージがない、もしくは現場で「これで完成」と決める権限がないままに仕事をしている場合だ。明確な成果イメージがないため、指示も丸投げになり、運が悪いと際限がないかのように仕事が延々と続く。

 オフィスワーク主体の仕事の仕方であれば、お互いになんとなくイメージを共有しながら、途中で雑談や小さな会話ベースで進捗確認と軌道修正を行うことができる。また、実は作業を指示する方も、そのプロセスで自分が指示していることの明確なゴールイメージを持つこともある。

 だが、リモートワークでは、そのような贅沢な時間の使い方は現実的ではない。そのため、どうしても作業指示が「丸投げ」「包括的」になり、作業をする方も要領を得ないまま仕事を進めがちで、結果、過剰品質な仕事をして長時間労働になるケースも多々ある。

 よく「リモートワークでは評価が難しい」と言われるが、問題の根っこは同じである。部下に何をさせるべきかを決め、進捗管理をすることができないのに、部下の評価ができるわけがない。そのできなさがリモートワークで目立つようになっただけだ。

3. 他人の時間=お金という感覚が薄い職場

 「時間は有限なので生産的に使うべき」という話に反対する人はいないが、それがこと他人の時間になるとその意識が甘くなりがちだ。そして、リモートワークになるとその傾向がより強くなり、ウェブ会議における「巻き込み問題」と「内職問題」という、他人の時間を無駄遣いする傾向が生じる。

 「巻き込み問題」とは、とりあえず関係者には声をかけろとばかりに、必要以上に大人数をウェブ会議に巻き込むことだ。拒否権があればいいのだが、そうでない場合はいい迷惑だろう。

 「内職問題」とは、ウェブ会議に出てはいるが、話を半分だけ聞いて別の作業を行っているケースだ。特に役職上位者が話を部分的にしか聞いておらず、突拍子もない指示を出したり、内容を覚えていなかったりと、部下たちが右往左往してしまうケースは意外に多い。これでは、上司が率先して部下の時間を無駄にしているようなものだ。

 社員の時間を「定額使い放題プラン」のように考えている会社は、ITツールによって広がった使い放題の枠を徹底的に活用するだろうし、それこそが長時間労働を引き起こす起点となるだろう。

リモートワーク下の長時間労働解消のためにできること

 リモートワーク下の長時間労働は、ITツールの使い方、ましてやITツールそのものの問題というより、便利なITツールに「古い働き方」の常識をねじ込むことで発生している問題だということはご理解いただけたであろうか。

 これまでの働き方を抜本的に変える、となると経営企画や人事部門の守備範囲になりそうだが、実はこの問題の解決のカギを握っているのは、IT部門だ。上記に挙げた「残念な共通点」を真っ正直に変えるのであれば、それこそ組織のあり方、社員の意識を根っこから変えていかなければならない。しかしそれは本質的でも、あまりにも迂遠なアプローチである。

 むしろ「ITツール活用のスキルとリテラシー向上の課題」として捉え直した方が、短期的にはアプローチしやすくなる可能性は高い。例えば、長時間労働発生の温床と言ってもよいウェブ会議をとっても、会議の開催、運営方法に関して、エチケット的なことだけではなく、やり方そのものに関するルールを設定しているケースは意外に少ない。

 単にツールの利用方法ではなく、ツールを利用する上での考え方やお作法を定義しながら、細かくこれまでの働き方を変えていく流れをつくることの有効性は、筆者自身、何度も目にしている。このことについては別の回で紹介していきたい。

 次回は、リモートワークへのシフトが進む中「職場のIT化」を急ぎ、ITツールを導入して多額の投資をしたものの、生産性が上がらないのはなぜなのか、実態とその原因を探る。

(第2回は5月上旬にて掲載予定)

喜島 忠典(きじま ただすけ)
クニエ ヒューマンキャピタルマネジメント担当
マネージングディレクター

大手外資系サルティングファームなどを経て現職。「企業の戦略実行力強化」をテーマに、数多くの組織、人事改革のプロジェクトに従事。変革期における組織や人材戦略のデザイン、人材マネジメントの仕組設計、およびチェンジマネジメントなどを手掛けている。主な著書に『部下が育つ組織をつくる技術(労務行政)』などがある

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