このセキュリティを軸にしたクラウドアプローチはHashiCorp主導である。米本社最高経営責任者(CEO)であるDave McJannet(デイブ・マクジャネット)氏は以下のように解説した。
「利用するパブリッククラウドでサービス内容が異なり、開発者は最新の環境を使いたがるものの、ネットワークやセキュリティ、運用担当者は標準化を求める。Terraformで一貫性を持ったシェアードサービスを実現し、VaultはIDブローカーの役目を担う。Consulは一貫性を持ってネットワーク上の情報を自動化し、(アプリケーションワークロードオーケストレーションの)「HashiCorp Nomad」も一貫性を持った体験を開発者に届ける。これらはすべてOSS(オープンソースソフトウェア)だ。この1年で1億回以上ダウンロードされている」
注力範囲が大規模開発や展開から、セキュリティに移行しつつある理由についてMcJannet氏は「われわれのクラウド運用モデルは『インフラの自動化』『ゼロトラストモデル』『DevOps』だが、収益の内訳を見るとセキュリティが大きい。われわれはセキュリティ市場にも焦点を当て、追求していく」と説明した。
HashiCorpソリューションを日本市場に根付かせるため、HashiCorp Japanは「マーケティング活動の強化」「大企業市場への本格参入」「パートナーエコシステムの確立」の3軸を重点施策として掲げた。日本法人の花尾氏は次のようにマーケティング活動の強化を説明した。
「(日本法人設立以降)コミュニティーを通じて世の中に浸透させる活動を継続してきたが、まだ知名度が低く、ビジネスを阻む要因になっていた。(今後は)マーケティングキャンペーンなどを含めたメディアへの露出強化や日本語化に注力する。直近では日本語のマイクロサイトを立ち上げたが、ホワイトペーパーなどは英語のまま。この点も強化ポイントの1つ。加えて従来よりコミュニティには多くの支持をいただいてきたが、日本語対応で一層の活性化を図り、大企業ビジネスへの相乗効果を生み出したい」
大企業市場への本格参入は、TerraformとVaultによる顧客基盤作りと同時に、通信やウェブテックの各業界を中心に、DX推進中の大企業に向けた働きかけを平行して進める。
パートナーエコシステムについて、すでに国内パートナー企業はディストリビューターとしてネットワールドが、認定パートナーとしてサイオステクノロジーとSB C&Sが、再販パートナーとしてラック、日立ソリューションズ、楽天コミュニケーションズ(グループ内部のみ)、grasys、クラスメソッドが、教育パートナーとしてカサレアルが名を連ねる。
ここに2021年4月にグローバルの戦略的提携を発表したCisco Systemsが加わる形だ。花尾氏は「(重点施策の着手で)ここからステージが変わる」と意気込みを語り、人員増強もあわせて取り組む。
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