スタートアップ500社と2025年までに連携--マイクロソフトが中小企業支援

阿久津良和

2021-06-02 06:00

 日本マイクロソフトは6月1日、中堅・中小企業向け施策の注力分野に「ハイブリッドワークの推進」「ビジネスプロセスのデジタル化」「スタートアップ企業と連携したインダストリーDX(デジタル変革)」を定めたことを表明した。

 同社は、業界特化型の支援体制を設けると同時に、2020年度から中堅・中小企業向け施策にも取り組む。4月22日には「ITよろず相談センター」を開設、「まずはリモートワークやハイブリッドワークから着手し、ビジネス(フロー)のデジタル化やオンプレミスシステムのクラウド化を支援する中堅中小企業に特化したサービス」(執行役員 コーポレートソリューション事業本部長の三上智子氏)とし、中堅・中小企業の水平的な業務改革に取り組む。同センターの特別協賛パートナーにKDDI、SB C&S、ダイワボウ情報システム、リコージャパン、大塚商会、富士フイルムビジネスイノベーションが参画している。

「ITよろず相談センター」の概要
「ITよろず相談センター」の概要

 Microsoftによれば、Microsoft Teamsの1日当たりのアクティブユーザー数は1億4500万を突破した。日本マイクロソフトの調査では、中小企業におけるTeamsのユーザー数が1年で4倍(2020年2月~2021年2月)になった。中堅・中小企業のクラウド移行はこの1年で22%向上したという。三上氏は、「いよいよクラウドがスタンダードになりつつある」と所感を述べ、「地方との格差が広がり、20%のギャップが生じている。顧客やパートナー企業から社内の人材不足や能力不足、適切な相談先を見つけられないとの声が届いている」と話す。

 このような背景から同社は、全国および地方の顧客に情報発信するキャンペーン施策の強化や、クラウドの導入・活用を支援するパートナーなどのオファーの提供に注力。「(日本マイクロソフトの)強みは全国に広がるパートナー企業。中堅中小企業のよき相談相手になる」(三上氏)と、パートナーとの連携強化で顧客の相談に対応するとした。

 「ビジネスプロセスのデジタル化」については、Teamsの“ハブ化”を推進する。SBテクノロジーが提供する「クラウドサイン for Microsoft Teams」などの例があり、業務効率の向上を目的としたSaaS利用が増加中とのこと。「TeamsとSaaSベンダーのソリューションをつなげていきたい」と三上氏はアピールした。

 一方で、オンプレミス向け製品のソフトウェアベンダーについても、「何千ものオンプレミスベースのソリューションがある。クラウド化して自社販売する需要が高く、WindowsやSQLベースで書かれているため支援しやすい」と三上氏。パートナー企業とMicrosoft Azureでの運用を推進するとし、その一環でダイワボウ情報システム内に「DISクラウドビジネスセンター for Microsoft Azure」を設立した。

 全国94拠点にAZ-900(Microsoft Azure Fundamentals)を取得した491人がおり、クラウドソリューションプロバイダーのパートナー1万9000社に対して、SaaS化の提案やトレーニング実施など支援を行う。「これまではお任せした部分を支店との連携を深め、パートナーを鍛え上げるリソースを拡大していく」(三上氏)

「DISクラウドビジネスセンター for Microsoft Azure」の概要
「DISクラウドビジネスセンター for Microsoft Azure」の概要

 また、三上氏は「既に地方のクラウドシフト事例が続々と増えている」とも述べた。広範な業務アプリケーションを提供している鹿児島県の日本システムは、トラックの運行管理パッケージをMicrosoft Azureにシフトすることで設置・管理工数を削減し、他県へも営業エリアを拡大させたという。石川県の建設会社ドットウェブは、建設業向け原価管理システムをSaaS化し、中小規模の建設会社における事務所依存型の作業を軽減させている。兵庫県のA-ZiPは、レガシーなMicrosoft Accessベースの帳票の情報をクラウドに移行させ、部門にまたがるデータを一元化した。山形県のAsahi accounting Robot研究所は、多様な領収書や帳票をCognitive Serviceで自動仕訳し、会計作業のRPA(ロボティックプロセスオートメーション)でデジタルデータを蓄積している)。

 スタートアップ企業との連携では、2019年12月16日に開始したスタートアップ支援プログラム「The Connect」を通じて、132社のスタートアップ企業の支援を達成したという。2020年内に100社への提供を目標に掲げ、これをクリアした。代表的な事例には、画像解析技術で救急医療現場でのリアルタイムな記録や、電子カルテへのシームレスな情報連携を実現するTXP Medicalがある。

「The Connect」プログラムでの目標
「The Connect」プログラムでの目標

 この他には、契約時の情報格差を埋めるため法務プロフェッショナルが確認したAI(人工知能)で契約者をチェックする「LeCHECK」や、建設業などの現場仕事のリモート支援を行う「SynQ Remote」、ローコードとAIで物流領域の在庫や勤務管理を実現した「UMWELT」などの事例を挙げた。

 日本マイクロソフトは、2025年度末までにスタートアップ企業との連携を500社に広げ、中堅。中小企業向けクラウドビジネス規模を10倍に拡大する目標を掲げる。「数字ではなく質の方が重要。(500社は)絶対に達成できる」(三上氏)とし、人員増強などの5カ年計画を策定した。

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