IBM、「Telum」プロセッサー発表--AI推論でリアルタイムの不正検出など実現へ

Chris Duckett (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2021-08-24 12:31

 IBMは米国時間8月23日、人工知能(AI)推論アクセラレーターを搭載した同社初のチップである「IBM Telum」を発表した。取引の実行中にリアルタイムで不正を検出するといったタスクを実現する上で活用できる。

IBM Telum Processor
提供:IBM

 IBMは、「このチップは8基のプロセッサーコアを搭載するとともに、スーパースカラーアーキテクチャーを採用した、極度に並列化されたアウトオブオーダー実行パイプラインを有し、クロック周波数は5GHzを超えており、エンタープライズクラスのさまざまな種類のワークロードでの需要に向けて最適化されている」と述べている。

 「キャッシュおよびチップの相互接続インフラをゼロから設計したことで、コアあたり32MBのキャッシュを実現し、32基のTelumチップにまで拡張可能となっている。また、デュアルチップ型のモジュール設計には220億個のトランジスターが搭載されており、17層にわたる金属レイヤー上の配線長は19マイル(約30km)に達している」(IBM)

 このチップは、サムスンが開発した極端紫外線(EUV)テクノロジーによる7ナノメートル(nm)プロセスで製造されており、IBM ResearchのAIハードウェアセンターも開発初期に関与している。

 このチップの開発には3年を要しており、このチップを搭載した最初のシステムは2022年前半に向けて計画されているという。

 「IBM Z」のハードウェア開発に従事する上級テクニカルメンバーであるAnthony Saporito氏によると、L2キャッシュを組み合わせることで256MBの仮想L3キャッシュを実現でき、最大8基のTelumチップを組み合わせることで2GBの仮想L4キャッシュを実現できるという。

 同氏は「Telumの設計で実現された重要なイノベーションの1つは、チップのシリコン上に直接AIアクセラレーターを搭載し、すべてのコアを直接接続したことで、ハードウェア設計からファームウェア、そしてOS、ソフトウェアに至るまでのスタックでエコシステムを構築して、ディープラーニング(DL)をありとあらゆるトランザクションにもたらしたというものだ」と述べている。

 「その部分の設計は、研究グループとシステムグループの間で実施された本当にクールな共同作業であり、DLの推論を念頭に置いて直結した設計によって規模の拡大が可能になる」(Saporito氏)

 「1秒間で大量のトランザクションを処理する中(中略)このテクノロジーを用いることで、システム上でトランザクションを実行しながらリアルタイムでのDL推論や不正検出、アナリティクスを実行し、洞察を得ることが可能になる。またそういったことを高いスケーラビリティーと高い信頼性、ゼロダウンタイムで実現できる。それがこのプラットフォームの核心だ」(Saporito氏)

 5月には、IBM Researchが2ナノメートル(nm)技術を用いた初のテスト用半導体の製造に成功したと発表した。7nmノードのチップと比べて性能が45%向上し、電力を75%削減できると想定されているとIBMは述べていた。

 2nmテクノロジーを使用した製品の製造は2024年末に開始される見込みとされている。

 IBM Researchのハイブリッドクラウド担当バイスプレジデントMukesh Khare氏は、「世界でも最先端の製造技術の多くが約7nmで、一部が5nmである中、IBMが2nmのトランジスターを作れると示せたのは素晴らしいことだ。これは、この業界が今後10年間は進歩し続けられることを意味している」と述べていた

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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