企業は、ハイブリッドワークや柔軟性の向上といった今後の働き方に関する戦略を導入しようとしているが、経営者と従業員とで従業員体験について認識に差がある。Gartnerは調査結果を先ごろ公開して指摘した。
Gartnerが公開したのは、2021年1月に4000人の従業員を対象に実施した調査「2021 Gartner Hybrid Work Employee Survey」。同社のHRプラクティスディレクターAlexia Cambon氏によると、「将来の従業員体験を計画する上で重要な分野を調査したところ、全てにおいて従業員と経営幹部とで大きな意見の不一致があった」という。
このような不一致は、放置しておけば、将来の業務計画に対する信頼と従業員の賛同を得る上で致命的な過ちとなる可能性があると同氏は述べている。調査では、経営者が解決すべき6つの認識の差を指摘している。
経営幹部は企業文化に柔軟性があると考えているが、従業員はそう思っていない。調査によると、経営幹部の75%は、事業が柔軟性のある文化の中で営まれていると考えているが、自社の組織文化が柔軟な働き方を受け入れていると回答した従業員は57%にとどまっている。経営幹部の約4分の3は、柔軟な勤務形態が従業員をいかに支援するかを会社が理解していると考えているが、同じ考えを持つ従業員は半数しかいなかった。
経営幹部は従業員よりもリモートワークするための装備が整っている。リモートで効率的に働くのに必要なテクノロジーを持っていると回答した従業員は66%。これに対して経営幹部の回答は80%だった。オフィス同様にバーチャル環境で勤務するためのリソースを提供するのに資金が投じられていると回答した従業員は59%だったが、経営陣では76%となっている。経営幹部と従業員とで在宅で勤務する能力についての認識に差があり、それが柔軟性を活用する妨げとなっているなら、従業員にさらなる不利益をもたらす可能性があるとGartnerは述べている。
従業員の経営幹部に対する信頼度は低い。従業員の41%しか「自分たちの利益のために上層部は行動してくれている」に同意しなかったのに対し、経営幹部では69%となっている。「従業員が勤務の柔軟性を乱用しないと組織は信頼してくれている」に同意した経営幹部は70%だったのに対し、従業員は58%。経営幹部は、自分たちが信頼されているとより感じる傾向にあるという。
経営幹部は意見に耳を傾けていると思っているが、従業員はそう思っていない。従業員の47%のみが「上層部は意思決定の際に自分たちの視点を考慮に入れてくれている」と考えているのに対し、経営幹部の75%が考慮に入れていると回答している。職場環境が従業員の多様なニーズや好みを取り込んでいることについては、経営幹部の72%が同意したが、従業員で同意したのは59%のみだった。
経営幹部は従業員で異なるコミュニケーションの印象。組織が発信するコミュニケーションの内容や効果に関する経営幹部と従業員の認識には、明らかな違いがあるという。Gartnerは例として、経営幹部の71%は、勤務条件をコロナ前のモデルに戻したいという考えを自社上層部が既に表明していると考えているが、そのような印象を受けている従業員は50%であることを挙げている。
経営幹部は従業員よりも大きな目的を感じている。組織はこれまでになく共通の目的を作り出そうとしており、77%の経営幹部は、自分が所属する組織の重要項目に関わっていると感じているが、同様に感じる従業員は59%だった。ここ1年半で多様性、公平性、受容性への関心が高まったことで、さまざまな従業員グループが組織の多様性についてどのように感じているかが明らかになったとGartnerは述べる。経営者の70%は、自社の管理職が自社の幅広い労働力と同様に多様性に富んでいると考えているが、従業員で同様の考えを持っているのは52%だけだという。