フィンテックスタートアップのEVERING(エブリング)は、キャッシュレス機能搭載のスマートリング「EVERING」を今秋に一般発売する。同製品においてタレスジャパンは、リングの組み込みチップや非接触型のテクノロジー、スマートリングによる安全な決済体験を提供する。発売に合わせて9月15日、タレスジャパンが説明会を開催した。
EVERINGは、Visaのタッチ決済(非接触型決済サービス)に対応したスマートリング。非接触で感染症対策へのニーズに応えるほか、指輪タイプのため財布やクレジットカードを取り出す必要がない。リングの内部にICチップが搭載されているため充電が不要で、紛失した際は専用のアプリケーションで利用を停止できるのも特徴だ。
EVERINGの利用イメージ(出典:EVERING)
税込価格は1万9800円で、有効期間は4年間。タッチ決済に対応しているVisa加盟店であれば、基本的に利用できる。
EVERING 代表取締役 CEO(最高経営責任者)の川田健氏は、「EVERINGには、『Everythingにつながるリング』という意味が込められている。今回は決済ツールとしてリリースするが、今後は自宅のスマートロックとの連動なども行い、リング一つで生活できる世界を提供したい」と展望を語った。
フランスに本社を置くタレスは1970年に日本法人を設立し、コネクティビティー、ビッグデータ、サイバーセキュリティ、量子コンピューティングなどを扱っている。タレスジャパンでサイバーセキュリティ部門を担うタレスDISジャパンの金融事業本部では、主にICカード、デジタルペイメント、デジタルバンキングにおける認証基盤を提供している。金融機関の顧客は3000社以上に上る。
今回の取り組みにおいてタレスジャパンは、組み込みチップの提供に加え、OSやリングを利用するためのパーソナライズサービス(さまざまなデータをリング内に書き込むこと)を行う。日本を含む複数のアジアの国々で構成されている専任のチームが、パーソナライズサービスやソフトウェア/システムの開発を担当する。
同社によると、2019年に発行された約30億枚のEMV(Europay、MasterCard、Visaの総称)のうち、非接触カードは約17億枚だった。今後5年間で非接触カードは急速に普及し、年平均で8%増加すると予想される。2024年には、年間で発行される非接触カードは約27億枚に達し、全体の約8割を占めると見込まれる。
非接触型決済のメリットの一つに、専用の機器へ差し込む必要がない分、さまざまな形状で提供できることがある。その結果、ウェアラブルデバイスやステッカーのほか、将来的には生体認証での決済も可能になるとしている。
タレスジャパン 代表取締役社長のCyrille Dupont(シリル・デュポン)氏は、「EVERINGは革新的でファッション性が高い製品を提供する、前を見据えたスタートアップ。今回の連携は、日本を非接触の未来へ導く一端になると思う。非接触の動きは特に決済分野で進むと見られ、この分野はわれわれが成長させていきたいと思っているところ。今後もフィンテック企業など新しい決済事業者と協業したい」と述べた。