「Microsoft Power Platform(パワープラットフォーム)」という名称を耳にしたことがあるだろうか。デジタル化した業務工程を自動実行する「Power Automate」、ビジネスアイデアをアプリケーション化する「Power Apps」、チャットボットを簡単に構築する「Power Virtual Agents」、データ駆動型で現在の情報を可視化する「Power BI」を組み合わせたブランド、もしくは製品群を指す。
コード開発をバックオフィスのシステム部門ではなく、営業部門などフロントオフィスで開発しようという潮流、つまり最小限の言語で開発できるローコードや特定の開発言語を必要としないノーコードの流れからMicrosoftも2018年から製品をローンチ。日本マイクロソフトが2019年5月に開催した「de:code 2019」でも、「Microsoft Azure」を基盤にPower Platformなどの4軸でビジネスを大きく推進すると意気込んでいた。
「de:code 2019」風景。Azureの左上にPower Platformの文字が確認できる
各アプリケーションはSaaSとして動作するが、ビジネスインテリジェンス(BI)のレポートを作成するための「Power BI Desktop」、レガシーなアプリケーションやウェブページの操作を自動化する「Power Automate Desktop」などはローカルPC上で動作する。当然ながら各自は単独操作、実行が可能だ。その核となるのが「Microsoft Dataverse」(旧Common Data Service)だ。
Dataverseは、従来のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)の利点と容易性を兼ね備え、SQLに関する知識や負荷分散、スケーリングといったシステム管理も不要。既存システムと連携させるためのETLなどにも対応する。
セキュリティレベルを高めるため、従業員の役割ごとにアクセス権限の付与機能も欠かせないが、たとえば「現場で実務に関わらない役職はレコード作成可能、編集不可。現場責任者である部長は全レコード編集可能」など階層型の権限設定も行える。
Dataverseは「Offce 365 Apps」やAzureのデータを格納できるため、Power AutomateやPower Apps、Power BIで利用するデータやSaaSの実行結果を格納する場面に最適だ。ひとまずは「Azure専用のクラウドDB」という認識で構わない。
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ここではPower Platformの概要、Power Automate、Power Appsの基本的な使い方をご理解いただくため、公式ドキュメントを併読してほしい。
まずはPower AutomateとPower Appsの概要を紹介しよう。
読者の中にはかつての「Microsoft Flow」の名称がなじみ深い方もおられるPower Automateは、業務工程を自動化する一種のロボティックプロセスオートメーション(RPA)である。450超のサービスと連携し、データの取得や条件分岐といった処理を予定時刻や条件を満たしたタイミングで実行できる。前述したPower Automate DesktopをPCに組み込めば、API連携機能を持たないレガシーなアプリケーションやウェブブラウザーの操作も可能だ。