東北大学とNECは、発電用ガスタービンの数値シミュレーションにおけるスーパーコンピューターを活用した高速化技術を開発した。これにより、従来の手法で約9日かかっていたガスタービン圧縮機1.5段における非定常熱流動の全周シミュレーションを、世界最速の1.3日で実施することに成功したという。
ガスタービンと蒸気タービンから構成されるコンバインドサイクル発電でのタービンは、従来の発電時の定格運転とは異なる急速起動や停止を頻繁に繰り返す非設計状態での運用が強いられ、タービンの寿命を縮めたり、翼の破損を招いたりすると懸念されている。
さらなる効率的な発電が行えるタービンの設計開発も求められており、ガスタービンや蒸気タービン内で発生する物理現象を支配するマルチフィジックス熱流動は、学術的・社会的にも重要な研究テーマだという。
東北大学の研究グループは、これまでにマルチフィジックス熱流動の非定常大規模シミュレーションを実現する技術を研究してきたが、ガスタービンや蒸気タービンの構造は複雑で、発電時にタービンの中を通るガスや水蒸気の圧力、温度、化学的変化を考慮したシミュレーションには長時間を要するといった課題があった。
そこで同大学の知見とNECのスーパーコンピューターにおける高速化と大規模並列化技術、そして東北大学サイバーサイエンスセンターの「スーパーコンピュータAOBA」と組み合わせることで、発電用ガスタービン圧縮機における非定常熱流動全周シミュレーションの高速化を実現した。
スーパーコンピュータAOBAはNECのベクトル型スーパーコンピューター「SX-Aurora TSUBASA」を採用しており、従来東北大学とNEC共同で研究開発を行ってきたSX-Aurora TSUBASA向けの最適化技術を数値シミュレーションに応用している。
東北大学とNECは今後、ガスタービンの高効率化、耐久性の高いタービンの実現を目指すとともに、高速・高精度な数値シミュレーションによるタービンのデジタルツインを用いて、脱炭素社会の実現に貢献していく。