英国気象庁(Met Office)が、Microsoftとスーパーコンピューターに関する十数億ドル規模の契約を結んでいる。気象予報や気候変動のモデリングの精度を大きく向上させる計画だ。
提供:Microsoft
英政府は2020年2月、最先端のスーパーコンピューターの開発に総額12億ポンド(約1800億円)投資すると発表した。Microsoftと英国気象庁は、「世界で最も強力な気象、気候予測のスーパーコンピューター」の開発でパートナーシップを組み、今後10年かけて協働する。新しいシステムの運用開始は、2022年7月になる見通しだ。
この投資は、英国気象庁の167年におよぶ歴史の中で最大規模となる。科学者らは、このスーパーコンピューターによって、悪天候のより正確な警報を可能にするとともに、気候変動が地球に与える長期的な影響の予測モデルを改善したいと考えている。
この新システムは英国南部に設置される。Microsoftによると、気象と気候に特化した最も先進的なスーパーコンピューターになると期待されており、世界のスーパーコンピューターの上位25に入ることになる。
Microsoft UKの最高経営責任者(CEO)Clare Barclay氏は、「英国気象庁の深い専門知識、データ収集能力、歴史的アーカイブが持つ可能性に、『Microsoft Azure』を活用したスーパーコンピューターの絶大な規模とパワーを組み合わせることで、予報を改善して、気候変動の取り組みを支援できる。そして、英国が今後数十年にわたり、気候科学の最前線に立ち続けられるようになるだろう」とコメントしている。
Microsoftは、AzureクラウドプラットフォームとHewlett Packard Enterprise(HPE)の「HPE Cray EX」スーパーコンピューターを連携させ、サービスとしてのスーパーコンピューティングを提供する。
「AMD EPYC」プロセッサーが利用され、システム全体で150万個を超えるプロセッサーコアを搭載する。60ペタフロップス以上を達成する見通しだ(1ペタフロップスは毎秒1000兆回の浮動小数点演算を実行できる性能)。これらの性能は、Microsoftが今後10年間で改良させていく中で、さらに向上するだろう。またこのスーパーコンピューターは、約4エクサバイトのデータを保存、処理できる。
英国気象庁によると、まず第1段階では現在のシステムと比べて、6倍のコンピュートキャパシティを実現する。アップグレードに伴い、2027年以降はさらに3倍に増強される見通しだ。
新しいスーパーコンピューターは稼働後、さまざまなモデリングや予測のユースケースに応用される。より高度なシミュレーションに基づき、短期的、局所的な気象予報が改善され、暴風雨や洪水、雪などに備え、緊急時の対応の準備が強化される。
また、モデルのシナリオが増え、環境データやソーシャルデータが増加して、さらなる詳細なモデルと組み合わせることで、リスクに基づいた計画に向けた予報や予測が大きく改善される。例えば、市の規模で詳細なシミュレーションを作成し、局地的な気候の情報を提供して、公共交通機関のインフラなどの都市設計を改善することが考えられる。航空業界もより正確な気象予報で、安全性と燃料効率の向上というメリットが得られる。
さらに英国気象庁は、気象や気候のさらなるデータにアクセスできるようになることで、企業はこの情報に基づいた新たなサービスの創出やイノベーションの機会を得られるとしている。この投資は10年間で、総額130億ポンド(約2兆円)の経済的なメリットをもたらすと期待されている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。