ブロックチェーンは環境に優しいとは言えないテクノロジーだ。科学者らは今、スーパーコンピューターから学んだ知恵を用いて、スケーラビリティーを追求しつつブロックチェーンのエネルギー消費を削減するための手法を開発しようと取り組んでいる。
スペインのバルセロナに設置された「MareNostrum 4」スーパーコンピューター
提供:バルセロナスーパーコンピューティングセンター(BSC)
暗号資産(仮想通貨)の世界では物事が速いペースで進んでいるが、温室効果ガス排出量の急増を防ぎつつ、同テクノロジーの規模を拡大するというのは簡単ではない。
暗号資産の採掘は、控えめに言っても環境に優しくない。ブロックチェーンの実装事例として最もよく知られているビットコインの採掘では、1年間におよそ100テラワット時前後の電力が消費されている。
Teslaの最高経営責任者(CEO)Elon Musk氏は暗号資産の採掘に費やされるエネルギーについて「異常だ」と述べており、同社は気候変動への懸念から、少なくとも暗号資産の採掘がより地球に優しいものとなるまでビットコインでの支払いの受付を停止するとしている。なお一風変わった話として、エルサルバドルは最近、ビットコインの採掘に火山由来の地熱によって発電した電力を用いる計画を発表している。
しかし、エネルギー消費の落とし穴を避けつつ、ブロックチェーンのスケーラビリティーを拡大する、すなわちボトルネックを生み出したり、信頼性の低下を引き起こすことなく、1秒あたりのトランザクション数を何倍にも引き上げる方法がある。
バルセロナスーパーコンピューティングセンター(BSC)のシニアリサーチャーであるLeonardo Bautista-Gomez氏は、「VISAやMastercardのような中央集中型のシステムでは、1秒あたり5万件のトランザクションを処理できる一方、イーサリアムでは1秒あたり15~20件、ビットコインでは7~10件を管理する能力しかない」ため、こうしたシフトは極めて重要だと述べている。
Bautista-Gomez氏は2018年からイーサリアム財団と協力し、ブロックチェーンの課題を解決するために取り組んできている。その武器は、礼拝堂に設置されているBSCのスーパーコンピューター「MareNostrum」だ。
このプロジェクトには、シャーディングをはじめとするさまざまなテクニックによって、ブロックチェーン上での取引速度がどのように引き上げられるのかを研究する、オープンソースのシミュレーション実行が含まれている。
シャーディングとは、ブロックチェーンのネットワークを「シャード」と呼ばれる小さなグループに分け、それらを並列に動作させることでトランザクションのスループットを向上させようとするテクニックだ。いわば、ネットワークのワークロードを分散させてより多くのトランザクションを処理できるようにするという、スーパーコンピューターで使われているものと同様のテクニックだ。