NTTコミュニケーションズ(NTT Com)の丸岡亨 代表取締役社長は10月20日、オンラインで開催した年次イベント「NTT Communications Digital Forum 2021」に合わせて記者会見し、コロナ禍の収束を見据えたDXビジネスの推進やNTTグループ再編などについて言及した。
NTTコミュニケーションズの丸岡亨 代表取締役社長
まず、会見前の同イベントの基調講演で丸岡氏は、顧客企業へのアンケート結果などを引用して市況を説明。コロナ禍の対応で多くの顧客がリモートワークを導入、拡大させた状況から、徐々にデジタルトランスフォーメーション(DX)として新規事業開発や既存事業の改革に乗り出す動きに変化しつつあるとした。調査では、DX投資を「維持する」が45%、「拡大」が24%だった。特に製造業のDX意欲が高いという。
コロナ禍では同社の通信回線のトラフィックも増加傾向が続く。背景にはリモートワークや学校でのオンライン授業などがあるとし、映像や動画データの利用増加がトラフィックを増加させているとした。同日時点で国内のコロナ禍は落ち着きを見せるが、「コロナ禍が収束しても、トラフィックの拡大は続くだろう」(丸岡氏)と予測した。
コロナ禍におけるトラフィック変化の推移
なお、同社ではコロナ禍の前からツールや制度の整備、就業環境の改善などを図り、働き方改革を進めてきたが、コロナ禍によってリモートワーク率は80%台を維持しているという。
働き方改革における取り組み
こうした状況を踏まえて丸岡氏は、引き続きDX事業を推進すると表明。特にスマートシティー(社会インフラ)、スマートヘルスケア(健康医療)、スマートファクトリー(製造)の3つを今後の成長領域に位置付け、パートナーとの共創ビジネスを進めるとともに、同社がデータ活用のインフラを担う立場として、同社のデータ基盤「Smart Data Platform」(SDP)を中核とする高信頼のセキュリティと高可用の運用によるサービスに注力していくとする。
ICTサービスにおける取り組み
また、地球環境の保護や持続可能な社会の実現も多くの企業で経営テーマとなり、丸岡氏は、各種ICTサービスで顧客企業におけるこれらの取り組みを支援していくとしたほか、同社でもNTTグループの次世代情報通信基盤「IOWN」をデータセンターやネットワークなどの各種インフラに積極採用することで省エネ化を進め、2030年までにデータセンターとネットワークにおけるカーボンニュートラルを実現するとした。
環境における取り組み
講演後の会見で丸岡氏は、NTTグループの再編について、NTTドコモのモバイルソリューションやNTTコムウェアのソフトウェア開発ソリューションと連携した企業顧客へのDXソリューションの提供強化が期待されるとコメント。ただし同日時点では、NTTの再編で懸念される市場寡占化の懸念に、総務省が公正な競争環境の確保を勧告する方針が伝えられている。
ドコモやコムウェアとの具体的な協業内容について丸岡氏は、「まだ決まっていない。まずは公正競争を確保する上で必要な社会からのご意見をしっかり受け止め、グループの方針のもと、協業を進めていく」とコメント。「ドコモのモバイル、コムウェアのソフトウェア、われわれの固定網やクラウドを組み合わせることで、顧客のDXに大きく貢献できると期待している。早い時期に具体像を示したい」とも述べた。
コロナ禍の収束を見据えた働き方改革については、オフィスワークとリモートワークを柔軟に組み合わせたハイブリッドワークの導入を視野に入れつつ、リモートワーク率を少なくとも70%台で維持する考えを示した。
また、NTT持株の澤田純 代表取締役社長が2025年度までに原則としてグループでの転勤や単身赴任を廃止する方針を明らかにしているが、丸岡氏は、同社としての働き方改革の内容を必要に応じて見直していると説明。「職住近接の実現に向け、個別ながら介護や子育てなどの事情からリモートで勤務するケースが既に十数件あり、そこでの知見などを社内に展開していきたい。さまざまな課題があるが、丁寧に対応していく」とした。
DXビジネスに関しては同日、エコシステムパートナーとの共創を推進する新プログラム「OPEN HUB for Smart World」を発表。関係者が共同作業するための施設を東京・大手町に2022年2月に開設する計画も明らかにした。4月には東京・田町にエコシステムパートナーの技術やシステム、サービスなどの連携を図るための技術検証環境も構築済みで、丸岡氏は、「DXの共創におけるわれわれの取り組みをしっかりと発信していきたい」と述べた。