鹿島・日立ら、デジタルヘルス証明で共同実証--生体情報を用いて手ぶらで提示

NO BUDGET

2021-10-25 11:04

 鹿島建設(鹿島)、日立製作所(日立)、H.U.グループホールディングス、九州大学、電通の5者は、新型コロナウイルス感染症の検査結果やワクチン接種履歴を手ぶらで提示できる新たなデジタルヘルス証明の実現に向けて共同実証を開始した。

 実証では、指静脈を活用した公開型生体認証技術「Public Biometric Infrastructure」(PBI)を用いる。同技術は、指静脈や顔、虹彩などの生体情報を安全に扱うことを可能にする日立独自の認証技術。認証装置で読み取った生体情報をそのままの状態で登録するのではなく、暗号化して復元できない形に変換するため、万一システム上のデータが漏えいしたとしても、生体情報を悪用することは不可能で、プライバシーの保護と高度なセキュリティを両立しているという。

 今回、9月27日〜10月6日には鹿島が所有する「赤坂Kタワー」において、実証への協力に同意した同社従業員を対象に、ワクチン接種履歴などの事前登録から検査の実施、デジタルヘルス証明の発行、オフィス入館までの一連の技術検証を実施した。一連の流れを検証したところ、技術面と運用面で有効性が確認できた。

 今後、オフィスなど建物内での実装に向けた準備を進めるとともに鹿島の建設現場などでも共同実証を行う予定だ。

実証の概要フロー
実証の概要フロー(出典:報道資料)

 実証では、対象の従業員がPersonal Health Record(PHR)アプリ「ウィズウェルネス」をダウンロードし、検査予約やワクチン接種履歴の登録を行う。ウィズウェルネスは、H.U.グループホールディングスの連結子会社である医針盤が提供する製品で、健診結果・検査結果・受診結果などをスマートフォンやPCなどのデバイスでいつでも確認できる。

 陰性証明は検査結果と九州大学病院の医師が診療業務支援システム「医'sアシスト」((イーズアシスト)で行う事前問診で総合判定し、ウィズウェルネスに診断結果を通知することで、デジタルヘルス証明として発行される。医'sアシストは、医針盤が提供する予約・受付管理からオンライン問診票、診察支援などクリニックのあらゆる業務を効率化するためのクリニック向けサービス。

 また、参加者の同意を得た後、日立の非接触型指静脈認証装置「C-1」で指静脈の情報を事前登録し、ウィズウェルネスで管理されている情報と連携する。これにより入室時は、指を装置にかざすだけで認証が可能となり、紙書類やスマートデバイスによる本人確認や証明書の提示は不要となる。

【実証の様子】事前準備:デジタルヘルス証明発行および公開型生体認証技術PBI登録
【実証の様子】事前準備:デジタルヘルス証明発行および公開型生体認証技術PBI登録(出典:報道資料)
【実証の様子】入室時のオペレーション
【実証の様子】入室時のオペレーション(出典:報道資料)

 今回の実証では、個人情報である証明書については第三者による管理ではなく、個人の自己主権のもとで管理が可能であることや、明確な本人の同意・意思に基づいて証明書を開示する仕組みを検証した。

 また空港検疫などで利用されている抗原定量検査とPCR検査の組み合わせを採用し、抗原定量検査の結果が判定保留などの場合はPCR検査を実施した。

 次回の実証では、デジタル庁が推進する「Vaccination Record System」(VRS:ワクチン接種記録システム)のワクチン接種履歴とのデータ連携や、国際標準「スマートヘルスカード」に準拠したデータ仕様の実装を予定している。

 また、学校・病院・イベントホール・レストラン・観光地・建設現場など、オフィスビル以外の場所に対象範囲を広げるべく検討していく。実証における各社の役割と目的は下記の通り。

 
 

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