クラウドコンピューティングサービスの勢いが止まらない。IT分析会社Canalysによると、多くの企業がデジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んでいることから、2021年第3四半期のクラウドインフラサービスへの支出は世界全体で約500億ドル(約5兆5000億円)に達した。
提供:Getty Images / iStockphoto
クラウドインフラサービスには、IaaSとPaaSなどがあり、自社専用のインフラで運用する場合と、共有インフラを使う場合とがある。クラウドインフラサービスの需要は第4四半期も堅調だとCanalysは言う。企業のクラウド支出は前四半期比では24億ドル(約2700億円)増、前年同期比では130億ドル(約1兆5000億円)近くも増加した。
この成長の大部分は、コロナ危機の影響が長期化していることによるものだ。従業員や顧客が自宅に閉じこめられている間も事業継続性を確保するため、多くの組織が新たなデジタルプロセスの導入を迫られた。
IBMの最近の調査によると、コロナ危機によって組織の59%でデジタルトランスフォーメーションが加速した。多くの企業が製品・サービスのデジタル化や顧客体験の向上といった新プロセスの導入に取り組んでいることから、クラウドコンピューティングは大企業が投資している「新興技術」の中で、2位以下を大きく引き離し、最大規模の分野となっている。
IBMによると、クラウドコンピューティング関連の売上は2020年には2190億ドル(約24兆円)だったが、2028年には7910億ドル(約90兆円)に達するとアナリストはみている。
景気のいい話だ。しかしCanalysによれば、数カ月前から続いているコンピューターチップの世界的な不足が、クラウドの導入に急ブレーキをかける恐れがあるという。需要と供給のバランスが崩れていることに加えて、コロナ危機の影響でサプライチェーンの持続可能性が危うくなっていることが、世界規模の半導体不足につながった。一部のアナリストによれば、この状況は2022年まで続く可能性があるという。
半導体の不足は、電子機器業界や自動車業界に長期的な影響を与えているが、その影響はデータセンターの運営に欠かせないコンポーネント、例えば配電ユニットや自動転送スイッチ、発電機などの供給にも及んでいる。
クラウドインフラに使用されるコンピューティング製品やストレージ製品を提供するWiwynnは、2021年後半には部品が不足し、供給が滞る「深刻な」リスクがあると最新の四半期報告書に明記している。
CanalysのリサーチアナリストBlake Murray氏は、「チップの製造能力が企業の全体的なコンピュート需要に追いついていない。クラウドサービス事業者はインフラを十分に強化できない可能性がある」と警告する。