働き方に対する考え方が進化しているにもかかわらず、Googleはオフィス回帰に向けて大胆で費用のかかる賭けに出た。
Googleは1月の初め、ロンドン中心部にあるオフィススペースの取得に10億ドル(約1100億円)もの資金を投じる計画を明らかにした。また、Google UKのトップであるRonan Harris氏は、BBCの取材に対して、同社は英国の従業員数を6400人から1万人に増やすとともに、オフィスでの業務に回帰し、スタッフがオフィスのデスクで働く状況に戻ることを望んでいると語った。
Harris氏によれば、Googleの新ロンドンオフィスは、ハイブリッドで柔軟な新しい働き方に合わせたものになるという。このビジョンからは、Googleは必ずしもコロナ前と同じ9時5時のオフィス仕事に戻ろうとしているわけではないことが伺える。
当然ながら、このタイミングでGoogleが豪華なオフィスを惜しげもなく調達したことに眉をひそめる人もいる。ソフトウェア企業であるDistributedの共同創業者であり、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるCallum Adamson氏は、「Googleのロンドンの不動産に対する大規模投資は、オフィス労働への回帰に対する自信を示しているのかもしれないが、この自信は根拠のあるものではなく、近視眼的だ」と述べ、今回の投資は、大企業や大手IT企業がハイブリッドワークの名目のもとに対面での仕事に戻ろうとする試みの1つに他ならないと主張している。「オフィス空間の所有はコロナ以前の時代の遺物であり、むしろ従業員体験やビジネスの成功を妨げる」と同氏は言う。
多くの企業は、引き続きある程度リモートワークを維持する意向を示している。一方で、何社かの大手IT企業を含む一部の企業は、人生の大半をオフィス内やオフィスへの通勤で過ごしたいとは思っていない人が多いことを認めるのに消極的だ。
ただし、誰もがオフィスはもう要らないと考えているわけではない。多くの人は、相変わらず同僚と対面で会い、人と知り合うことができる空間を求めているし、必要としていると言ってもいいかもしれない。IT企業のCognizantで英国およびアイルランドのマネージングディレクターを務めるRob Walker氏は、「ビジネスの世界では、今後もオフィスが何らかの形で一定の役割を担い続けるだろう」と述べている。ただしWalker氏は、コロナ禍前と同じ水準で不動産への投資を続ける企業は、「負け馬に賭けることになる」と信じているという。
「ビジネスリーダーがこのことに早く気づくほど、強固な企業文化を維持し、コロナ禍中に失われたイノベーションのいくつかに火を付けるのが容易になる。これは多くの人が、昨今の雇用主に期待されるようになった柔軟性を享受しながら、新しくなった魅力的な空間に自由意志で戻って来るようになるからだ」(Walker氏)