ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は3月23日、日系企業の海外拠点におけるIT化の状況などを調べた「海外進出企業の情報システム/デジタル技術活用に関する動向調査」の結果を発表した。日本の本社とのギャップなど興味深い事情などが明らかになったとしている。
調査は、同社が2021年8月に表明の経営方針の中で掲げる海外事業強化の一環として、コロナ禍による市場動向を把握する目的から実施したという。海外拠点を有する日系企業の日本本社および海外現地法人を対象に、1月13~31日にウェブでアンケートを行った。有効回答は571件で、回答者の内訳は46.8%が本社、53.2%が海外拠点。また、製造業が69.2%、非製造業が30.3%だった。調査を監修した矢野経済研究所 主席研究員の小林明子氏は、「IT関連調査において海外拠点の担当者が回答の半数を占めるケースはあまり例がない」と述べ、調査自体がユニークな取り組みであると説明した。
課題感とITの活用意向に相関性あり
まず回答企業が抱える経営課題の上位は、「市場環境の変化に対応した経営計画・事業計画の立案」(46.6%)や「新製品・新サービス・新規事業の開発」(37.7%)、「売上高の増加」(37.3%)が挙がった。
B-EN-Gは、2014年にも同様の調査を実施。当時は海外拠点の回答がないものの、今回の調査項目の一部と比較可能だとして、考察の中で引用した。この経営課題についての結果は、2014年調査に比べて、「市場環境の変化に対応した経営計画・事業計画の立案」が約18ポイント上昇した一方、「コスト削減」が約15ポイント、「海外拠点展開」が約20ポイントそれぞれ低下した。
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B-EN-G マーケティング部長の山下武志氏は、2014年時点では事業のグローバル化が大きな経営課題だったが、2022年時点ではそれが当たり前になったと指摘。その代わりに、コロナ禍に伴う環境変化へ対応や新たな収益機会の拡大など、IT化やデジタル化、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する動機が上位に挙げられたと述べる。また、今回の調査で加えた「ERP(統合基幹業務システム)を含む情報システムやデジタル技術の活用、DXの推進」を課題とする企業は34.9%だった。
これら課題の解決において必要なITシステムにおける重点項目には、今回調査での上位に「IoT・AI(人工知能)など新しいデジタル技術の活用」(37.7%)や「経営情報のリアルタイムな把握」(37.3%)、「全社情報システムとの統合と情報共有」(34.5%)、「基幹システムの再構築」(28.0%)などが挙がった。新しいデジタル技術の活用を除く上位の回答は、いずれも2014年調査に比べて約5~8ポイント低下したが、引き続きITシステムにおける重点項目になっているという。
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また、「ERPを含む情報システムやデジタル技術の活用、DXの推進」について、コロナ禍以前と状況を比較したところでは、「進展した」の回答が半数以上を占めた。経営課題で「市場環境の変化に対応した経営計画・事業計画の立案」が挙げられていたことから、山下氏は、変化への対応においてITシステムやデジタル技術を駆使し、データなどを迅速に活用したいとする意向が高まっている様子がうかがえると説明している。
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