調査

アクセンチュア、「Fjord Trends 2022」を発表--企業は成長戦略の再考が急務に

藤本和彦 (編集部)

2022-04-01 07:00

 アクセンチュアは3月31日、生活者の視点から消費者の行動が文化、社会、ビジネスに与える影響に焦点を当てた最新レポート「Fjord Trends(フィヨルドトレンド)2022~新たな日々を織り成すもの~」を発表した。社会の在り方がこの2年間で大きく変わり、人々と仕事、消費生活、テクノロジー、地球との関係に変化をもたらしたことで、企業はビジネスの在り方を再設計する必要があると指摘している。

 Fjord Trendsは、アクセンチュア インタラクティブが発行する年次レポートで、同社の世界40カ所以上の拠点で活動する2000人以上のデザイナーやイノベーターが各地域での知見と調査を集約して作成したものになる。2022年で15回目となる。

 Fjord Trends 2022によると、従業員の期待値や考え方の変化、サプライチェーンの混乱による供給不足や、メタバースなど仮想環境の普及により、企業はデザイン、イノベーション、成長へのアプローチを見直すことが求められている。

 アクセンチュア インタラクティブでイノベーションおよびソート・リーダーシップを統括するMark Curtis氏は、「直面している時代の変化が、自社を取り巻くさまざまなステークホルダーとの関係性やビジネスに与える影響を過小評価してはいけない。人々は、同僚、ブランド、生活する場所や社会など、自分に大切なものとの関係性を見直している。この変化は企業の在り方も変え、さらに世界やその構造さえも一変させるだろう。未曽有の事態が続くが、企業が人々や社会、地球と新しい関係を紡ぎ直す大きなチャンスでもある」とコメントする。

 Fjord Trends 2022は、文化、社会、ビジネスに影響を与えるであろう人々の行動とトレンドを次の5つの観点でまとめている。

  1. あるがままに:新型コロナウイルス感染症の大流行から2年が経過する中、人々の主体性の意識が高まり、働き方、人との関わり方や消費に対する考え方に影響を与えている。人々は「自分自身とは何か」「自分は何を大切にしているのか」を改めて問い直している。「組織・集団」よりも「個人」を優先する意識により、企業が社員をどのように導き、価値を提示するのか、そして顧客との新たな関係の構築について、見直しを迫られている。
  2. 飽くなき欲望に終止符:この1年、多くの人が品不足や光熱費の値上げ、日常的なサービスの不足を経験した。サプライチェーンの混乱は一時的かもしれないが、その影響は今後も続く。環境への意識の高まりや、スピーディーに便利さが手に入るという「飽くなき欲望」に終止符を打つべきだと考える人が増えるだろう。企業は、世界中の人が経験した、入手困難な状況に対する不安に応えることが求められる。
  3. 次なる開拓地:文化的な爆発が起こると言われるメタバースは、人々がやりとりする情報、インターフェース、空間を統合し、インターネットの「次なる開拓地」となるだろう。メタバースは新たなビジネスの場を提供し、新しい職種を生み出し、ブランドに無限の可能性を与える。人々は企業がメタバース上での案内人になることを期待するだろう。メタバースは、スクリーンやヘッドセットを通してのみ存在するのではなく、物理世界での体験や場所ともつながるようになる。
  4. 真実のより所:人々は今、ボタンをタップするだけで、あるいは音声アシスタントとの短いやりとりだけで答えを得ることができる。簡単にすぐに答えが得られれば、人はより多く質問をするようになる。企業から見れば、顧客から受ける質問内容やチャネルが多様化している。質問にどのように回答するかはデザインにおける大きな課題であり、信頼を得るための原動力である。また今後、競争力の源泉にもなっていくだろう。
  5. 「ケア」を大切に:昨今、セルフケア、他人のケア、ケアに関するサービス、デジタルおよびアナログのケアなど、あらゆる形態でのケアが着目された。健康や医療に関する資格の有無にかかわらず、ケアは企業やブランドにとってチャンスであり、課題でもある。自分自身や他人のケアに関連する責任は、今後も重要であり続けるだろう。デザイナーも企業も同様に、顧客や社員との接点においてケアの要素が十分に組み込まれているかを見直すことが求められている。
アクセンチュア インタラクティブ本部 マネジング・ディレクター 兼 Fjord Tokyo 共同統括 グループ・デザイン・ディレクターのエドアルド・クランツ氏(左)とアクセンチュア インタラクティブ本部 シニア・マネジャーの小町洋子氏
アクセンチュア インタラクティブ本部 マネジング・ディレクター 兼 Fjord Tokyo 共同統括 グループ・デザイン・ディレクターのエドアルド・クランツ氏(左)とアクセンチュア インタラクティブ本部 シニア・マネジャーの小町洋子氏

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