米国のサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)長官は、テクノロジーが日常生活に占める重要性が増していることから、ソフトウェア開発に「セキュリティバイデザイン」を浸透させる必要があり、サイバー攻撃から社会を守るための革新的な考え方が求められるようになっていると警告を発した。
CISAのJen Easterly長官は、英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)がウェールズのニューポートで開催したカンファレンス「CYBERUK」で動画で行った基調講演で、今日のサイバーセキュリティの問題に注目することは重要だが、将来の課題について考えることも重要だと語った。
Easterly氏は、「特に私たちのようにテクノロジーやサイバーセキュリティに関わる者にとって、今後10年間のリスクはかつてないほど高いものになる」と述べ、今後10年間は、サイバー防衛を支える最も重要な価値に力を集中することが「極めて重要」だと警告した。
同氏によれば、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃といった、サイバーセキュリティが現在直面している課題に加えて、新興技術が新たな脅威をもたらす可能性があるという。例えば、モノのインターネット(IoT)が網羅されたスマートシティの台頭は、サイバー犯罪者やその他の敵対的な攻撃者に、私たちが日常的に利用しているサービスを中断させたり、改ざんしたりするための直接的な手段を与えてしまう可能性がある。それを避けるためには、都市を初めから適切に設計しておく必要がある。
Easterly氏が論じた課題は、サイバーセキュリティだけではなかった。同氏は、民主主義国家陣営は、基礎技術や、顔認証技術に関する課題や、実用的な暗号解析能力を持つ量子コンピューターの開発競争や、人工知能(AI)の成長やインターネットの分断などの分野で、権威主義体制の国家に先んじる必要があると主張した。
「今日の新技術が、明日の世界のあり方を決める。そして私の考えでは、次の10年間が、第二次世界大戦後の自由主義世界の秩序が今後も生き残れるか、あるいはより楽観的には、価値観を共有する民主主義国家が今後も繁栄し続けられるかどうかが決まると言っても過言ではない」と同氏は話した。