NEC、オール光通信事業の強化を表明--オープン化、標準化が鍵に

國谷武史 (編集部)

2022-09-15 12:56

 NECは9月15日、メディア向け説明会を開催し、NTTの「IOWN」など次世代ネットワーク基盤に向けたオール光通信の事業を強化すると表明した。オープン化、標準化が鍵になるとして新製品も発表している。

 次世代ネットワーク基盤は、光通信技術などを活用した超高速・超大容量、超低遅延、超多接続といった特徴を備える新たな情報通信インフラと位置付けられる。NTTが推進する「IOWN」が代表的で、NECは2020年にNTTと業務・資本提携を結んでおり、通信機器メーカーとして次世代ネットワーク基盤の実現と普及を推進していく立場にあるとする。

NTTの「IOWN」とNECの取り組み
NTTの「IOWN」とNECの取り組み

 説明を行ったネットワークソリューション事業部門 フォトニックシステム開発統括部長の佐藤壮氏は、まず代表取締役 執行役員社長兼CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏が掲げる「Truly Open, Truly Trusted」という同社のビジョンに照らして、オール光通信事業の方向性を紹介した。

NEC ネットワークソリューション事業部門 フォトニックシステム開発統括部長の佐藤壮氏
NEC ネットワークソリューション事業部門 フォトニックシステム開発統括部長の佐藤壮氏

 オープンで標準化された仕様に準拠する製品による光通信ネットワークを実現することにより、ベンダーロックインの排除によるイノベーションの推進、オープンな共創による社会的価値の最大化、最適なネットワークの提供が可能になり、そのために同社は豊富な情報通信システムの構築・運用経験に基づく高信頼性の提供、超大容量・超低遅延・安全な社会基盤の貢献、社会課題解決と省電力による環境保護の推進に取り組むとする。

 次世代ネットワーク基盤が必要とされるのは、5G以降のモバイル通信サービス、「スマートファクトリー」や「スマートグリッド」など各種産業インフラの超高度化、コネックテッド交通インフラ、公共安全を高度化するモニタリングインフラなどの実現や普及が見込まれるからになる。

 佐藤氏は、こうしたニーズにより実現される2030年頃のネットワークの姿として、超リアルタイム処理あるいは超高精細映像データの伝送などのために現在の階層型からフラットな構成になること、大規模データセンターから分散配置されたデータセンター(エッジDC)への変化による広域化やメッシュ化が進むこととし、また大規模地震といった自然災害での通信インフラの事業継続性を担保するためにもメッシュ化が進むだろうと解説する。

2030年頃を想定した次世代ネットワーク基盤のイメージ
2030年頃を想定した次世代ネットワーク基盤のイメージ

 このネットワーク環境における技術としては、人工知能(AI)を利用した自動障害復旧など高度な堅牢性、毎秒ペタビットクラスの超大容量や広域化・メッシュ化の波長制御などの光伝送、光通信機器の省電力化や小型化が必須になるとした。

 佐藤氏は、メーカーがこれまで提供してきた階層型の通信システムでは、上述したような次世代ネットワーク基盤のさまざまな要件への対応が困難だと述べる。そのため5Gで進められている無線通信システムのオープン化(Open RAN)などの取り組みを例に、次世代ネットワーク基盤でもオープン化、標準化が不可欠だとした。これにより将来は、ネットワークとコンピューティングが一体的にもなり、オンデマンドで多様な通信サービスを提供可能になっていくと説明する。

オープン化による次世代コンピューティング/ネットワーク基盤の姿
オープン化による次世代コンピューティング/ネットワーク基盤の姿

 次世代ネットワーク基盤におけるオープン化、標準化への活動には、NTTを中心とする「IOWN Global Forum」や、主にデータモデルに焦点を当てている「Open ROADM MSA」、ディスアグリゲーションなどに取り組む「Telecom Infra Project」、光技術の標準化や相互接続の実証に取り組む「The Optical Internetworking Forum」があり、NECもこれらのフォーラムに参加。オープンな光通信ネットワークを実現するための製品開発に注力しているとした。

 今回の説明会では、併せてIOWN Global ForumのOpen APNアーキテクチャー(Rel.1)に準拠している光伝送装置製品「SpectralWave WX」シリーズを発表。今後、国内外の通信事業者などへ展開していくという。

次世代ネットワーク基盤のオープン化、標準化に合せた新製品の概要
次世代ネットワーク基盤のオープン化、標準化に合せた新製品の概要

 佐藤氏は、次世代ネットワーク基盤の実装が段階的に進むとし、まずは5G以降のモバイル通信におけるアクセス網あるいはデータセンター間の相互接続(DCI)での導入が見込まれるとした。海外では、オープン化・標準化の策定に積極的な欧米、新興技術の導入意欲が高いとする中南米が先行するだろうと見ている。

 事業性については、次世代ネットワーク基盤の整備状況や機器のオープン化・標準化の進展によってさまざまな発展パターンが想定されるとしつつも、2027年時点においてシェア25%の獲得が1つの目標になるとした。この頃には、オープン化・標準化に準拠する機器の構成割合も2~3割になるだろうと予想する。

 佐藤氏は、当面に既存顧客における次世代ネットワーク基盤への移行を促すことが重要だとし、既存/新規のシステムの双方を効率的に統合運用管理できるような特徴を推進したいとした。また、次世代ネットワーク基盤への需要開拓も必要になるが、通信事業者と連携を図りながらメーカーとしての推進役を担っていきたいと話した。

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