松岡功の「今週の明言」

PwCコンサルティングが創設したシンクタンクは何を目指すのか

松岡功

2022-11-11 11:16

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、PwCコンサルティング PwC Intelligenceチーフエコノミストの片岡剛士氏と、日本ヒューレット・パッカード 執行役員の本田昌和氏の発言を紹介する。

「新生シンクタンクとして企業にもっと活用されるインテリジェンスを提供したい」
(PwCコンサルティング PwC Intelligenceチーフエコノミストの片岡剛士氏)

PwCコンサルティング PwC Intelligenceチーフエコノミストの片岡剛士氏
PwCコンサルティング PwC Intelligenceチーフエコノミストの片岡剛士氏

 PwCコンサルティングは先頃、新たにシンクタンク部門「PwC Intelligence」を創設したと発表した。片岡氏の冒頭の発言はオンラインの発表会見で、新組織を率いる立場としての意気込みを述べたものである。

 同社の発表によると、PwC Intelligenceは「ビジネス環境の短期的・中長期的な変化を捉え、クライアント企業が未来を見通すための羅針盤となるシンクタンク部門」として創設された。PwCコンサルティングやPwC Japanグループにおける専門人材だけでなく、PwC米国の「PwC Intelligence」や英国の「Economics Consulting」をはじめ、PwCグローバルネットワークの組織とも連携し、経済・社会情勢の変化に対応する将来予測や課題解決への提言などに取り組む。

 PwC Intelligenceでは、マクロ経済、サステナビリティー、地政学リスク、サイバーセキュリティ、テクノロジーを重点領域に設定。各領域の有識者が提供するインサイトやデータ分析を基に、グローバルトレンドや業界の知見も取り入れながらビジネスに関わるリスクや影響を分析することで、企業の事業変革を支援していく構えだ(図1)。

図1:PwC Intelligenceのコンセプト(PwCコンサルティングの会見資料)
図1:PwC Intelligenceのコンセプト(PwCコンサルティングの会見資料)

 また、社内外の有識者とネットワークを作ることで集約される知見である「統合知」をより広く、より深くしていくことで、企業を取り巻く事象に対する解釈の確度を高める。これにより、従来、個別最適に陥りがちだった専門性の枠を超え、各領域の有識者が有機的につながることで、経営課題を解決する真のビジネスパートナーとして企業を支援するとしている(写真1)。

写真1:PwC Intelligenceにおける各領域のメンバー(PwCコンサルティングの会見資料)
写真1:PwC Intelligenceにおける各領域のメンバー(PwCコンサルティングの会見資料)

 新組織を率いる片岡氏は、1972年に愛知県で生まれ、1996年に三和総合研究所に入社。20年余りにわたって、官公庁の受託調査および景気や経済対策について論評するエコノミストとして活動。2017年7月から2022年7月まで日本銀行政策委員会審議委員を務めた。PwCコンサルティングには2022年8月に入社し、現職に就いた。

 片岡氏は会見で、現職に就いた思いについて次のように述べた。

 「シンクタンクが果たすべき役割として、世の中にある大量の情報をどのように整理し分析して今後の見通しを明確にしていくか。そのためにさまざまな分野の優れた専門家がそろっているか。そろっているだけでなく、それらの専門家が協働して価値あるインテリジェンスを提供しているかが非常に重要だ」

 さらに、こう続けた。

 「シンクタンクとして提供するインテリジェンスの活用をどのように広げていくか。これも非常に重要なテーマだ。グローバルの観点から日本において私がもっと促進すべきだと考えているのは、企業での活用だ。企業が自らのビジネスを成長させ、収益を一段と上げていくために、私たちが提供するインテリジェンスをもっと活用してもらえるようにしたい。PwC Intelligenceをそのような存在にしていきたいと考えている」

 20年余りにわたるシンクタンクのエコノミスト経験者の言葉だけに、重みのある訴求だと感じた。どのようなインテリジェンスを発信していくか、注目していきたい。

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