多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている中で、働き方において「ジョブ型」を採用し、社員が必要なスキルを習得する「リスキリング」にも注力するようになってきた。こうした動きは企業の取り組みではあるが、働く個々人からすると自分が目指すプロフェッショナルに向けて「自分ブランド」を磨く絶好のチャンスではないか。今回はそんな考え方をお伝えしたい。
「自分ブランド」とは何か、なぜ磨くのか
自分ブランドとは何か。ブランドとは、個々の企業や商品・サービスならではの価値と、それが周りに認められて信頼されていることを表現したものだ。例えば、企業名はまさしくブランドだ。それを自分自身に当てはめた表現が、自分ブランドである。本稿はそう捉えて読み進んでいただきたい。
自分ブランドは、自分の仕事におけるプロフェッショナルの証ともいえる。従って、自分ブランドを確立していくためには、プロフェッショナルとしての専門性やその能力、人格を磨き、実績を上げ、そのプロセスにおいて周りから信頼される存在であるために精進していかなければならない。
さしずめ大事なことは、そうした活動に励んで、自分ブランドを磨き続けていく姿勢である。
筆者はかねて、これからの時代はこの自分ブランドづくりが働く個々人にとって自らの最大のモチベーションになるのではないかと考えてきた。従って、何かの機会に訴求したいと思っていたが、ようやくそのタイミングがやってきた。その機会とは、ここにきて多くの企業が取り組み始めているジョブ型人事制度、そしてリスキリングのことだ。これらについて興味深い調査結果を2つ見つけたので、以下にその内容を紹介しよう。
1つ目は、ジョブ型人事制度について。この制度は、職務(ジョブ)内容を明確にした雇用形態と、それに基づく採用、人材配置、評価の仕組みのことだ。雇用形態として注目されがちだが、この制度の導入は「メンバーシップ」と呼ぶ従来の手法での「今いる人材で何ができるか」という資源活用の発想から、「事業戦略遂行のためにどんな人材が必要か」という人的資本と組織の在り方に対する戦略的アプローチへの転換を意味する。
幅広い業種の大手企業が相次いでジョブ型に取り組んでいるのは、人事制度のグローバルスタンダードに合わせることでグローバルな人材を獲得するとともに、ビジネスおよびマネジメントの変革に向けたDXを推進する上で、高度なスキルを持った人材が必要になるからだ。
ジョブ型を望んでいるのは、企業側だけではない。日本生産性本部がビジネスパーソン1100人を対象に2023年1月に実施した「第12回 働く人の意識調査」によると、メンバーシップ型を「同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる」、ジョブ型を「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない」と定義した上で希望する働き方を聞いたところ、図1に示すように、ジョブ型が66.9%、メンバーシップ型は33.1%だった。
図1:ビジネスパーソンが希望する働き方(出典:日本生産性本部「第12回 働く人の意識調査」)
この結果から、企業で働く側もおよそ3分の2がジョブ型を望んでいることが分かった。さらに興味深いのは、2021年4月から継続して行われているこの調査結果の推移を見ると、2022年以降、ジョブ型を希望する声が着実に高まっていることだ。こうした傾向が、自分ブランドづくりへとつながっていくのではないか。そう感じた調査結果だった。