今、話題沸騰の「ChatGPT」をはじめとするジェネレーティブAI(以下、生成AI)。新たな産業革命を巻き起こすとも言われるが、一方で、著作権やプライバシーの保護、セキュリティなどのリスクも指摘される。だが、最も大きなリスクは「人間が行う意思決定を生成AIに委ねてしまうこと」ではないか。
生成AIのリスクとはどのようなものか
PwC Japanグループ(以下、PwC)が先頃、生成AIに関する調査とそれに基づく見解について記者説明会を開いた。その全体の内容については速報記事をご覧いただくとして、本稿ではその中から生成AIの特徴とリスクにおける説明を引用した上で、筆者が生成AIについて最も懸念している点について述べたい。
PwCの説明からは、4つの図を示しながら、まずは生成AIのポイントを浮き彫りにしよう。
図1は、生成AIで実現できることの例を挙げたものである。縦軸の「テキスト」「プログラム」「画像/動画」「音声/音楽」といった機能を、横軸の「知的業務」「創造業務」へ活用した際にどんなことができるかを示している。生成AIを機能面で整理した分かりやすい図である。
図1:生成AIで実現できることの例(出典:PwC Japanグループの会見資料)
図2は、生成AIが日本企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の起爆剤として期待されている理由を挙げたものである。PwCは「サイロ化されたデータや非構造データに強い」「ユーザーフレンドリーで経営者でもリードしやすい」「質の高い学習データ(蓄積されたノウハウ)を保有している」の3つを挙げている。それを「ボトムアップで地道に業務を改善していく企業文化」や「個人・消費者主導のブームであり、広く一般社会での活用機運は継続」といった動きが下支えする構図が出来上がりつつある。
図2:生成AIが日本企業でDX推進の起爆剤として期待されている理由(出典:PwC Japanグループの会見資料)
一方で、生成AIは新たなリスクをもたらす。それを示したのが、図3だ。図の左側に記された特徴に関連する形で、右側に記された「大衆扇動」「サイバー犯罪」「製造物責任」「著作権侵害」「職業転換」「機密情報・個人情報漏えい」といったリスクが存在する。補足しておくと、製造物責任は「生成物に対する正確性や品質の担保」、職業転換は「生成AIに代替される職業から転換を迫られること」を意味する。
図3:生成AIがもたらす新たなリスクとは(出典:PwC Japanグループの会見資料)
図4は、「これからは生成AIのポテンシャルを生かしたユースケースを検討すべき」というPwCの見解を示したものだ。図の左側には、現在、取り組みが始まっているユースケースとして「高度な事務作業領域」や「クリエイティブ領域」を挙げた。そして右側には、今後、活用が期待される領域として「専門知識やノウハウを要する領域」や「意思決定を要する領域」を挙げている。
図4:「生成AIのポテンシャルを生かしたユースケース」におけるPwCの見解(出典:PwC Japanグループの会見資料)
その上で、「意思決定を要する領域については、多くの選択肢を網羅的に捉え、優先順位をつけながら考えを絞り込んでいくのはAIの得意とするところだ。AIのさらなる進展と共に、生成AIは今後、高度な意思決定を支援するようになるだろう」と述べた。