SAPジャパンは9月19日、「SAP Business AI」を中心とした国内AIエコシステムの展開について報道機関向け説明会を開催した。ビジネスプロセスに適切なAIを埋め込み、顧客業務の高度化を図っていく。
今やビジネスにAIを活用するのは珍しくない。SAPジャパン バイスプレジデント Enterprise Cloud事業統括の稲垣利明氏によると、同社自身も毎分15件の請求書を入金データと自動照合する「SAP Cash Application」や、年間4000万件の請求書を処理する「SAP Concur Invoice Management」を提供してきたが、1社単独の機能提供は適用範囲や速度的にも限界がある。そこで同社が取り組むのが、SAPアプリケーション内に他社製品を積極的に取り組んだパートナーシップのSAP Business AIだ。
SAPジャパンの稲垣利明氏
アプリケーション内にAIエンジンを組み込む方法やクラウド間の連携、データ統合による基盤提供など利用方法は多岐にわたる。また、SAPジャパン自身がビジネスデータとビジネスプロセスの文脈から事前学習したモデルを特定タスクに適応させるファインチューニングや、大規模言語モデル(LLM)のテキスト生成用プロンプトを設計するプロンプトエンジニアリングを施して、各部門におけるビジネス価値を高める機能を提供してきた。
SAP Business AIには、日本マイクロソフト、日本IBM、グーグル・クラウド・ジャパン、DataRobot Japanが参加を表明している。
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日本マイクロソフトは「Microsoft 365 Copilot」「Copilot in Viva Learning」「Azure OpenAI Service」を組み合わせ、「SAP SuccessFactors」における人材採用や社員学習を実現するソリューションを提供する。例えば、専門性や資格を持つ人材が必要な場合はMicrosoft 365 CopilotがSAP SuccessFactorsの情報を読み込み、必要な情報を付記して表示する仕組みだ。同社 クラウド&AIソリューション事業本部データプラットフォーム統括本部 Data&AI第三営業本部 本部長の巴山儀彦氏は、「人間とAIが補完関係にある」を説明する。
日本IBMは「SAP Start」のデジタルアシスタントを「IBM watsonx Assistant」で強化するソリューションを提供する。顧客対応から従業員対応に用いられるSAP StartのデジタルアシスタントにIBM watsonx Assistantによるチャットボットを組み込んで、利便性を高めるのが目的だ。なお、IBM watsonx Assistantに限らず、他社製チャットボットも利用できる。同社 常務執行役員 テクノロジー事業本部長 兼 AIビジネス責任者の村田将輝氏は、「SAP StartのデジタルアシスタントとIBM watsonx Assistantの組み合わせで、SAPユーザーのモダナイゼーション(近代化)を推進できる」と主張した。
日本マイクロソフトの巴山儀彦氏(左)と日本IBMの村田将輝氏
グーグル・クラウド・ジャパンは2023年5月に表明したパートナーシップの拡充を踏まえ、SAP&Google Cloudアナリティクスプラットフォームの構築を目指す。「SAP Business Technology Platform」(BTP)と「Google Cloud」の各サービスを組み合わせて在庫予測などの検証を行う基盤だ。また、自動車業界向けに「SAP Datasphere」と「Google Cloud Vertex AI」を組み合わせ、生成AIによるデータ分析を行うソリューションの提供も予定している。同社 スペシャリスト営業統括 SAP事業開発部長の澤田大二郎氏は、「バリューチェーンデータの安全性監視と業務効率の向上、顧客体験の強化とイノベーションの加速を実現できる」と説明した。
DataRobot JapanはSAP Datasphereと「DataRobot」を直接接続して、AIモデルの学習を実現した。学習結果は「SAP AI Core」や「SAP AI Launchpad」に展開し、各種ビジネスシーンに活用できる。AIモデルの陳腐化について、同社 シニアデータサイエンティスト/製造・ヘルスケアチームリードの川越雄介氏は「DataRobotはAIの一元管理やAIモデルの精度監視、業務トレンドの変化を自動検知して、AIモデルを自動で再学習できる。当然、SAPとの連携でも実現可能だ」と話した。
グーグル・クラウド・ジャパンの澤田大二郎氏(左)とDataRobot Japanの川越雄介氏