コンタクトセンターソリューションや企業向け構内電話交換機(Private Branch Exchange:PBX)を手掛けるAvayaは、AIを活用した「CCaaS(Contact Center as a Service)」 ソリューションの開発に本腰を入れている。2023年には、既存のオンプレミス環境とクラウドベースのソリューションをシームレスに連携させる「Avaya Experience Platform(AXP)」を発表。現在80カ国で展開しており、日本市場には2024年第1四半期から展開していく計画だ。
コンタクトセンターやPBXのクラウド化が進む中、Avayaは、既存のオンプレミスの資産を生かしながらクラウドと共存する「Innovation without Disruption(破壊なきイノベーション)」という戦略を提唱している。その意図は何か――AvayaのグローバルバイスプレジデントでAXPの総責任者を務めるAhmed Helmy(アメッド・ヘルミー)氏と、2023年5月から日本アバイア 代表取締役社長を務める内山知之氏に話を聞いた。
Avaya グローバルバイスプレジデント エクスペリエンス プラットフォーム ゼネラルマネージャーのAhmed Helmy氏(左)と日本アバイア 代表取締役社長の内山知之氏
AXPは、音声やテキストによるリアルタイムコミュニケーションと、ドキュメント共有やレポート作成といったワークストリームコラボレーション、さらにユニファイドコミュニケーション(UC)機能を備えるCCaaSのコラボレーションプラットフォームである。
AEPを中核とした構成イメージ。オンプレミス環境のコンタクトソリューションとは「AXP Connect」、外部クラウドサービスとは「Avaya API Exchange Hub」を介してそれぞれシームレスに連携する。社内のCRMや「Microsoft Dynamics 365」「Salesforce」といったクラウドベースのCRMとも連携できる
内山氏は、AXPの特徴を「現行のコンタクトセンタープラットフォームを含む外部システムとのシームレスな連携が可能であること」だとし、以下のように説明する。
「かねてからコンタクトセンターを運用している企業にとって、一気にクラウド環境へ移行するのは現実的ではない。特に大規模環境の場合、移行作業期間は1年以上を要する。そのため、『クラウド移行でイノベーションを実現したい』と考えても、その結果を得るのは1年以上先になる。それよりも、現状のオペレーションを停止させず、自社の方向性を見極めながらビジネスを成長させる『Innovation first, Migration later(改革優先で移行はその後)』の方が得策だ。特に金融機関などは、セキュリティやプライバシーの観点から、オンプレミス環境を継続したいという要望も多い」(内山氏)
Helmy氏も、「最終的に全てクラウドに移行するのか、一部をオンプレミスの環境に残すのかは顧客の判断だ。われわれは、そのプロセスをカスタマージャーニーと捉え、選択肢を提供するスタンスだ。いずれの選択であっても、AXPが(CCaaSコラボレーションの)中核であることに変わりはない」と語る。
AXPは、バックオフィスのUCとも連携している。そのため、コンタクトセンターのオペレーター(エージェント)は、顧客(カスタマー)との会話中に、バックオフィスにいる専門知識を持った従業員に、リアルタイムに問い合わせができる。エージェントが利用するブラウザーベースのアプリケーションにあるチャットボックスにテキストを入力すると、自動的にバックオフィスで利用している「Microsoft Teams」などにデータが流れ、担当者が閲覧、回答する仕組みだ。エージェントはアプリケーションを切り替える必要がないため、より迅速に対応できる。
Helmy氏は、「コンタクトセンターで重要なのは、カスタマーからの問い合わせに対して、転送やコールバックをせずに一度の通話で問題を解決する『1次解決率』を上げることだ。ただし、問い合わせ内容は多様化しており、1人のエージェントだけで対応できるものではない。1次解決率の向上にはバックオフィスの支援とAIが不可欠だ」と指摘する。