中国の大手IT企業である百度(バイドゥ)は現地時間1月15日、同社の生成型人工知能(GenAI)チャットボット「ERNIE Bot」(文心一言)を使って中国人民解放軍(PLA)のシステムを訓練しているとする研究者らとの関係を否定した。
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サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post:南華早報)は12日、PLAとつながりのある大学がバイドゥの大規模言語モデル(LLM)を用いて同軍の人工知能(AI)を訓練していると報じていた。同記事によると、中国人民解放軍戦略支援部隊信息工程大学の研究者らは戦闘戦略を予測するために、過去の紛争で用いられた武器や戦力に関するデータをこのLLMに投入したという。
南華早報は、中国の専門誌「Command Control and Simulation」に2023年12月に掲載された学術論文を引用し、「GPT-3.5」や「GPT-4」といった他のLLMも用いられていたと報じた。こうしたLLMは、訓練データに基づいて戦闘の戦略や結果を生成するようになっていたという。
研究者らは論文中で、2011年における米軍のリビア侵攻を引き合いに出し、米軍の戦略を予測するために、紛争時に双方が採用した戦闘戦術と、望ましい標的をERNIE Botに入力したと記している。
研究者らによると、このシミュレーション結果は意思決定の支援とともに、LLMの知識と認知理解能力のさらなる訓練と強化に用いることが可能だという。その目標は、AIを搭載した軍事システムの強化と、敵対する側の行動が予測しづらくなっている中で重要となる、敵の意図のより正確な把握だ。
研究者らは、この研究が初期段階にあり、研究目的に限定して実施されたものだとも記している。
南華早報の報道の後、バイドゥの株価は急落した。
その後、同社はこの論文の著者や大学とは一切関係がないと反論した。同社はこの論文に言及した声明で、ERNIE Botは一般提供されており、誰でも利用できると記している。
また同社は、この学術論文を執筆した研究者らや、これら研究者が提携しているいかなる研究機関とも「業務上の提携を結んだことはなく、特別にカスタマイズしたサービスを提供してもいない」と付け加えた。
そして、南華早報の記事はバイドゥの主張を反映したかたちに訂正されているとも記している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。