信頼と品質で創業10周年--リミニストリート日米トップが語る、日本法人の軌跡

渡邉利和

2024-01-26 07:00

 日本リミニストリートは、新オフィスへの移転に合わせて来日した米本社の最高経営責任者(CEO) 兼 取締役会長のSeth Ravin(セス・ラヴィン)氏によるプレス向けの事業説明会を開催した。

 米Rimini Streetの創業は2005年、日本法人である同社は創業10周年を迎えたというタイミングで、Ravin氏は「Rimini Streetは創業から約20年経過し、日本法人とはその歴史の半分の時間を共有している」と紹介した上で、日本法人が非英語圏で初の子会社であったことや、当時はまだ小さな企業であったRimini Streetが日本で成功できるかどうか懸念されたことなどを振り返った。

米Rimini Street CEO, President & Chairman of the BoardのSeth Ravin氏
米Rimini Street CEO, President & Chairman of the BoardのSeth Ravin氏

 同氏は、日本法人設立の経緯について「当時トヨタやキヤノン、シャープやパイオニアといった日本企業の米国子会社にサービスを提供しており、これらの顧客企業のグローバル本社の所在地である東京にオフィスを開設すべきだと考えた。これらの企業はわれわれが打ち出した『ミッションクリティカルシステムの第三者保守』という革新的なアイデアを積極的に受け入れてくれたが、日本の本社も米国子会社と同じようにこうした変化を受け入れてくれるかは分からなかったので、私自身成功できるのかかなり不安にも思ったが、日本のトップ企業の方々はわれわれのメッセージやテクノロジーに対するアプローチを評価してくれ、10年経った今では日本国内の顧客企業数は300社を越え、われわれにとって日本はグローバルで最大規模の市場の一つとなった」と明かした。

Rimini Streetが日本にもたらしたもの

 Ravin氏は「われわれは日本企業に対して、企業運営上重要な要素である『人・資金・時間』の使い方を考え直す新しい方法を提案した」とし、「OracleやSAP、IBMなどのエンタープライズソフトウェア企業やシステムインテグレーション(SI)事業者にとっての事業の成功は、顧客企業からより多くのIT予算を獲得することであり、そのための手段としてソフトウェア製品のバージョンアップグレードや新製品への移行を勧めてくる。それに対してわれわれは、顧客企業のCIO(最高情報責任者)やCFO(最高財務責任者)に『限られたIT予算をより戦略的な分野に投資できるよう、既存システムの保守コストを削減してはどうか』と提案している」とRimini Streetの事業を説明する。

 同社が提供する第三者保守は、ソフトウェアの開発元企業ではない第三者に当たる同社が保守サービスを提供するというものだ。エンタープライズソフトウェア事業にとっての保守契約は極めて利益率の高いビジネスであり、米国などで公表されているソフトウェア企業の決算報告などからは利益率90%以上に達することもあると知られている。一方、こうした保守契約がユーザー企業にその金額に見合う価値を提供していない例も散見されるが、ユーザー企業は保守契約なしでソフトウェアを利用することはできないものと考えて仕方なく支払っていることが多いのではないだろうか。

日本リミニストリート 代表取締役社長の脇阪順雄氏
日本リミニストリート 代表取締役社長の脇阪順雄氏

 日本リミニストリート 代表取締役社長の脇阪順雄氏は、日本法人設立当時を振り返り「日本に入ってきた時は『SAPやOracleが怒るのでは』『開発元が提供できないサービスを第三者が提供できるなんて怪しい』『安いからと飛びついたらあとで大変なことになるのでは』と心配された。日本市場では特に約束をきちんと守ることが極めて重視されるので、そこを間違ってしまうと信用を失ってしまう。保守契約はサブスクリプションモデルなので、ダメだとなったらすぐに契約を失い、元のベンダーサポートに戻られてしまうことになるが、10年間約束したことをきちんと守ってきたことでわれわれのサービスに満足していただき、ずっと契約を継続していただいている顧客企業が多い。実は10年前にご契約いただいたお客さまのシステムを今でもずっとサポートさせていただいており、その間に生じたOSのバージョンアップや最新のセキュリティ脅威への対応など、新しい要件への対応も行っている」と語った。

 第三者保守を利用するメリットとして、脇阪氏は「ERPなどの基幹システムの中核となる会計システムは、法改正などへの対応はあるものの、基本的な機能の部分はほぼ変わらない。新バージョンが出ても、見た目がきれいになったり新しい環境に対応したりはするものの、会計システムとしての基本部分がガラッと変わってしまうようなことはない。日本はデジタル化で世界から遅れていると指摘される中、限られたIT予算をERPやトランザクションシステムの保守に使い続けるのではなく、競合優位性を獲得できる戦略的な分野への投資に回すべきだとアドバイスさせていただいている。われわれの保守サービスでは、開発元企業が提供している保守サービスの半額で、開発元がサポート切れとした製品であっても契約から最低15年間は保守サービスの提供を保証している」と語る。

 なお、ベンダーサポートの場合はサポート対象がもともとの製品に含まれるコードだけで、ユーザー側のカスタマイズ部分などは対象外になってしまうが、同社の第三者保守ではこうした区別もなく、全てをサポート対象とするという。こうした対応のために同社では多数のエンジニアを擁している。日本法人では約80人の社員の大半がエンジニアだといい、さらにグローバル22カ国の約2000人のエンジニアと協力してサポートを提供する。

 公用語は英語だが、日本の顧客向けには当然ながら日本語でサービスを提供する。単に日本語ができるだけでなく、日本の文化や商慣習を熟知した担当者がアサインされるようになっているため、話が通じないなどのトラブルもないという。

 より良いサービスを半額で提供するという同社のビジネスモデルだが、実際にサービス提供のためのコストは開発元ベンダーに比べると高いという。ソフトウェアベンダーではリリース後一定期間でサポート提供を打ち切るなどの措置を行うが、同社は「ユーザー側で必要だと感じない限り、古いバージョンでもそのまま使い続けられるように長期に渡ってサポートを提供し続ける」ため、サポート対象がどんどん増えてしまうという問題もある。

 Ravin氏は「エンタープライズソフトウェアの開発元のサポート料金は極めて高額で、利益率も通常で90%程度、95%という例もある。一方われわれの利益率は65%くらいであり、より良いサポートを提供するためにより多くのコストを掛けているという形になっている。日本市場はサービスに高い品質を求めるので、この点もわれわれとマッチしており、それが日本市場で成功できた理由でもあると思う」と語った。

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