モンスターラボが大手ITベンダーに先んじて、生成AI活用のモダナイゼーションを始めた理由

田中克己

2024-03-01 07:00

 モンスターラボは2023年12月、生成AIを活用したモダナイゼーションを実現するツール「Code Rebuild AI」を開発し、レガシーシステムの刷新サービスを開始すると発表した。富士通やNEC、NTTデータなど大手ITベンダーが同様のサービスを開発する中で、なぜモンスターラボが先んじられたのか。その背景には、主力のユーザー企業のデジタルビジネスへのシフトに、レガシーシステムが妨げになっていることがある。伸び悩む売り上げを増加に転じさせる突破口にも見られる。

モンスターラボ 常務執行役員 平田大祐氏
モンスターラボ 常務執行役員 CTO 平田大祐氏

 モンスターラボで常務執行役員 兼 最高技術責任者(CTO)を務める平田大祐氏によると、2023年にあるユーザー企業からレガシーシステムのマイグレーションについて相談され、「生成AIを試そう」となったという。「いけそうな感触になり、概念実証(PoC)を実施した結果が良かったことで、2023年12月にプレスリリースを出した」と経緯を説明する。

 受注した案件は、IBMメインフレームと「PL/1」を、マイクロソフトの「Azure」と「C#」に変換するもの。その後、「AS/400(RPG)」や古い「Visual Basic」などから「Java」や「.NET」などに変換する案件も獲得する。平田氏は「大型システムの一部を取り出した数百万円から数千万円の規模で、うまくいけば、適用範囲を広げていく」と話す。PwCコンサルティングとの連携で、モダナイゼーションに関するセミナーを開催し、協業による受注にも取り組んでいる。

 変換の手順はレガシーシステムから検証する対象(一部)を選択し、対象からシステム構造を捉え、設計情報を復元する。次に、設計情報を基に古いコードを新しいコードに書き換える検証をし、書き換えたコードの動作などから現状のレガシーシステムの傾向を捉え、システム全体の刷新の戦略や計画を立案する。そして、レガシーシステムを刷新する。平田氏は「人(エンジニア)がやることを、生成AIがアシストするもので、いわば既存システムの仕様を人が読んで理解するようなこと」と、ステップを踏みながら変換していくと説明する。

 平田氏は「今後も変わるので、何%と言うのは危険」と、どの程度の生産性が向上できるかを語らない。「人が確認する部分もあるので、完全な自動化はできない」とし、PoCから得た生産性を本番向け数値として出すようにするという。続けて、同氏は「生産性が向上してなくても、人がやるよりもアウトプットの品質を担保できる」と、生産性を上げることより、意味があるケースもあると主張する。

 モダナイゼーションは、大手ITベンダーらの戦いになる市場。その多くは彼らが手掛けたもので、そこに2006年創業の新興システムインテグレーション(SI)で売り上げ130億円超のモンスターラボに勝てるチャンスがあるのだろうか。「当社にはプロンプトエンジニアリングのノウハウがある。加えて、『TO BE』のビジネス、特にモダンなシステムのアーキテクチャーに詳しく、経験を積んでいる」。業務システムを得意とするIT企業の買収もする。平田氏自身もIBMグループで、システム開発に従事した経験を持つ。

 だが、モンスターラボはモダナイゼーションの主戦場になりそうな「COBOL」からの変換実績が目下のところない。IBMなどのメインフレームからの変換プロジェクトは増える兆候にあるが、「(COBOLをやるのか)まだ決めていない」と平田氏は濁す。「どんなターゲットのシステムにするのか、そのサイズと競合になる。COBOLかもしれないし、AS/400からかもしれない。The基幹系ではないが、大型のシステムになる」。

 「ベースとする生成AIは『Azure OpenAI Service』か」との質問に、同氏は「そのような一般的なものを使っている。その上にデータやナレッジを独自に貯めている」とし、仕様からコーディング、テスト、さらに上流工程へと生成AIの活用を広げるとともに、使えるエンジニアを増やしていくという。モダナイゼーションの効果に関するレポートをまとめる予定もある。「各社とも2023年から(生成AI活用のモダナイゼーションに)取り組み始めたばかりなので、どんぐりの背比べだ。だが、当社の動きは大手より良いので、早く実績を増やす」と、同氏は意気込む。

 モンスターラボ 代表取締役社長の鮄川宏樹氏は2023年度決算説明会で、「イノベーション創出や売り上げ向上などSoE(System of Engagement)領域の強みを生かし、データ活用や業務改善の隣接領域を強化していく」と、業務システムや業務改革(BPR)にも取り組む方針を語っている。年率40%の成長を続けてきた同社が2023年度に赤字転落したことにある。

 2024年度以降、再び高成長を遂げる1つのカギがモダナイゼーションになるのかもしれない。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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