LegalOn Technologiesは4月9日、事業戦略・プロダクト戦略記者発表会を開催し、森・濱田松本法律事務所との業務提携と法務を包括的に支援する法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を発表した。
2017年4月に「LegalForce」の社名で設立された同社は、弁護士の法務知見と自然言語処理技術や機械学習などのテクノロジーを組み合わせ、法務関連のイノベーションを推進するサービスを開発・提供する。日本と米国に拠点を置いて事業を展開し、グローバルでの延べ導入社数は5000社を超える。製品としては、AI契約レビューサービス「LegalForce」やAI契約管理システム「LegalForceキャビネ」に加え、米国子会社による「LegalOn Assistant」などを擁する。
このような経緯を踏まえ、今後は「グローバルにおいてリーガルテックNo.1企業を目指す」と同社で代表取締役 執行役員・最高経営責任者(CEO)を務める角田望氏は述べる。2022年12月に現在の社名に変更した際、「法とテクノロジーの力で、安心して前進できる社会を創る」とのパーパス(存在意義)を策定しているが、それに向けた2年間の準備期間を終え、顧客に価値を還元するフェーズに入っていくとする。
角田望氏
戦略としては(1)英国への同時展開、(2)戰略的パートナーシップ、(3)新プロダクトーーという3つの柱を挙げる。
(1)では、グローバルという観点でサービスを米国で展開しているが、同じ英語圏である英国にも拡張するという。
(2)では、これまで同社はAIの部分を含めて自社で製品を開発していたが、戦略的なパートナーシップを強化することでより大きな価値を顧客に届けると同氏。LegalOn Technologiesは2月、Legalscapeと資本業務提携を結んでいる。今回、森・濱田松本法律事務所との業務提携が新たに発表された。
飯田耕一郎氏
同事務所のパートナー弁護士である飯田耕一郎氏は、「法律業界全般がテクノロジーの活用では最も遅れている」とし、「自然科学と違って法律は、書かれている文言にルールを当てはめれば答えが出るというものではなく、人間の価値判断がそこに必ず入ってくる業務なため」と説明する。そのため、同事務所でも、優秀な人材を集めて鍛え、本や資料といった「大量の紙をめくる」(同氏)ことで明け方まで長時間働くというのが競争の仕方だったという。
近年、テクノロジーの進化により情報収集が早く正確にできるようになってきたことから、同事務所でもテクノロジーを導入して競争力を失わないようにしていると飯田氏。そのような方向性とLegalOn Technologiesの法律の世界にテクノロジーを持ち込むという方向性が一致したことが提携の背景だと同氏はいう。
「企業法務は急速に変化しており、卓越した人間の能力に加え、デジタル化した情報をいかにうまく処理して迅速にクオリティーの高い結果を出せるかが、競争力に直結する時代になっている」と飯田氏は述べ、「本提携では、LegalOn Cloudを利用する企業に、当事務所の知見を専門的なドキュメントのひな型・解説という形で提供することにより、身近にアクセスしていただくことを企図している」と続ける。「本提携を通じて、一般化したプロダクトと弁護士による優れたアドバイスを、ハイブリッドで提供することを目指す」(同氏)