「まずはOpenAIを正確に理解してもらう」--OpenAI Japan社長が意気込み語る

寺島菜央 (編集部)

2024-04-16 13:58

 OpenAIは4月15日、アジアで初となる東京オフィスの開設を発表した。同日には記者発表会が行われ、日本法人OpenAI Japanの代表執行役員社長に就任した長崎忠雄氏とOpenAI 最高執行責任者(COO)のBrad Lightcap(ブラッド・ライトキャップ)氏が、日本市場における製品の展開を説明した。

左から、OpenAI COO Lightcap氏、OpenAI Japan 代表執行役員社長 長崎氏、OpenAI 渉外担当 副社長 Makanju氏
左から、OpenAI COO Lightcap氏、OpenAI Japan 代表執行役員社長 長崎氏、OpenAI 渉外担当 副社長 Makanju氏

 OpenAIは、2015年に米国・サンフランシスコから始まり、英国・ロンドン、アイルランドのダブリン、そして今回東京にオフィスを開設した。Lightcap氏は、「われわれにとって日本は非常に重要なマーケットだ」と強調する。日本における「ChatGPT」の週間のアクティブユーザー数は200万以上に上り、積極的に利用している現状を踏まえ、同氏は「日本への投資を考えた時に非常に可能性がある。このテクノロジーの可能性を広げられると考えている」と述べた。

 OpenAI 最高経営責任者(CEO)を務めるSam Altman(サム・アルトマン)氏はビデオメッセージで「本日の発表は、私たちが、日本の皆さん、政府、企業、研究機関との長期なパートナーとなることを願う最初のステップだ。日本は公共の利益のために人々と技術が協力してきた豊かな歴史を持っており、私たちはAIによって、日本の皆さんがさらに創造的で生産性を向上し、世界の進歩にさらに貢献すると信じている」と語る。東京オフィスの開設については、「東京は、その技術とイノベーションのリーダーシップで思えば、私たちの拠点として自然な選択だった」と説明した。

OpenAI CEOのSam Altman氏によるビデオメッセージ
OpenAI CEOのSam Altman氏によるビデオメッセージ

 同社は現在、消費者向けのChatGPT、中小企業向けの「ChatGPT Team」、エンタープライズ用にスケールされた「ChatGPT Enterprise」を製品として提供。AIモデルは「GPT-4」「GPT-4 Turbo」「GPT3.5」「DALL-E」「TTS」「WHISPER」を開発・提供している。

OpenAIの製品ロードマップ
OpenAIの製品ロードマップ

 同日には、日本への長期的なコミットメントとして、GPT-4の日本語特化モデル「GPT-4 Customized for Japanese」を発表した。前モデルと比較して、日本語の処理速度が3倍高速になるという。

 GPT-4 Customized for Japaneseのトレーニングでは、日本語の文字を読み取る能力の向上や、トレーニング中にデータの重要性をシフトする「アテンションリフト」の手法を取り入れた。同モデルでは、日本語テキストの翻訳と要約のパフォーマンス、コスト効率を向上させる。同モデルは、早期アクセスが可能で、数カ月以内にAPIを公開予定だとしている。

 東京オフィスでは、日本での採用や法人営業、カスタマーサポートなどを順次開始する。また、制度整備に必要な議論にも参加し、日本におけるAI活用の普及に尽力するとしている。

 日本では既に、ダイキンや楽天、トヨタコネクテッドなどがChatGPT Enterpriseを導入。トヨタ自動車のIT子会社であるトヨタコネクテッドで常務取締役を務める伊藤誠氏は、ChatGPTを利用することで、業務の生産性向上や新たな顧客ロイヤルティーの標識などに有用なツールになるとし、ChatGPT Enterpriseの活用を決めたという。「特に、ChatGPTを活用することで現場の知見を生かしたAIツールの開発やプログラミングスキルを持たない従業員でも業務課題に特化したAIツールの開発につながるのではないか」と期待を膨らませる。

 長くテクノロジー業界に身を置く長崎氏は、「生成AIの分野では、私自身の経験を生かすことで、より日本の社会や皆さんに対して貢献できるのではないかと思い、このポジションに就任することにした」と話す。同氏は今後の営業活動として、「日本のお客さまにOpenAIのことを正確に理解してもらうこと」から始めるという。「特にエンタープライズのお客さまに対して製品を提案し、その過程でわれわれに不足しているものを埋めていくことにフォーカスしていきたい」と述べた。

 またLightcap氏は、生成AIの研究開発の観点で、日本語の言語・文化やコミュニケーションのニュアンスなどを学習しモデルをスケールアップしていきたいと明かす。日本企業に製品を利用してもらうと同時に、企業とのパートナーシップを通して日本用のモデルを開発していく構えだ。

 日本市場での成長に関する質問では「たくさん成長したいと思っている」とLightcap氏が返答。現状では需要が未処理のままであるため、今後は長崎氏が整理し、日本の需要に応えていきたいと話した。

 Lightcap氏は長崎氏について「人と人とのコミュニケーション、日本の企業の皆さんが何を気にしているのか、何を重要視しているのかを優れたコミュニケーション能力で掌握していけると、そのような人物であると考えている」と述べ、「OpenAIをこれから日本に導入するに当たり、われわれにとっても学びの機会であると考えている。その役目も長崎氏には果たしてほしいと考えている。また、マーケットの皆さんが重要視していることを傾聴するという重要な役割を担っている」と語った。

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