文部科学省は4月24日、学校のネットワーク改善に向けて、全国の公立小・中・高等学校における通信速度の調査結果を発表した。これに併せて、学校規模ごとの帯域目安の設定も公開している。
同調査は、文科省が進める「GIGAスクール構想」の下、各生徒に配布された端末の通信環境について、学校設置者が契約している通信契約の内容や、各学校における実際の通信速度を把握する目的で行われた。調査は2023年11~12月に、学校設置者である各都道府県・市区町村教育委員会の約1800委員会と、全ての公立小・中・高等学校の約3万2000校を対象に実施された。
調査では、端末を十分に活用している授業の実測データを基に、学校規模ごとに1校当たりの帯域の目安として「当面の推奨帯域」を設定した。
「当面の推奨帯域」は、同時に全ての授業において、多数の児童・生徒が高頻度で端末を活用する場合でも、ネットワークを原因とする支障がほぼ生じない水準であり、端末の活用の日常化に向けて全ての学校が目指すべき水準として設定された。ただし、これは当面の水準として設定するものであり、サービスコンテンツの容量や利用態様に応じて見直されるという。
文科省が実施した測定結果と「当面の推奨帯域」を照らし合わせ、一定の仮定の下で推計すると、推奨帯域を満たす学校は21.6%で、学校の規模が大きくなるほど推奨帯域を満たす学校の割合が減少する傾向にあることが分かった。
「当面の推奨帯域」の詳細と、推奨帯域を満たす学校数(出典:文部科学省「学校のネットワークの現状について」令和6年4月)
文科省は調査結果を踏まえ、学校のネットワークの課題として「不具合の原因特定が不十分」「通信契約の内容が十分でない」「自治体において専門性のある職員の確保が難しく、交渉力が不足している」ことを挙げ、対応策を提示した。
不具合の原因特定においては、ネットワークがつながりにくいといった課題のある学校においてネットワークアセスメントの実施が徹底されるように財政支援を行うという。また、学校側の対応としては、機器の設定や設置場所の変更、最新の機器、相性の良い機種への入れ替えによってネットワークにつながりやすくなる場合もあるという。
通信契約においては、帯域確保型の回線を契約する自治体は約3%で、ベストエフォート型回線(共用回線)を契約している自治体は約95%にも上るという。文科省は、自治体に対して必要な財政支援を進めながら、広域調達や共同調達の支援を検討することで、スケールメリットによる価格低下や自治体の交渉力向上につながるのではないかとする。また、自治体に帯域の目安とその実現に向けて選択肢となる通信サービスを示し、地域における帯域の需要を具体化することで、通信サービスの種類や提供主体の拡大に期待するとしている。
自治体担当者の専門性向上には、自治体向けに「学校ネットワーク改善ガイドブック」を提示することで、担当者がネットワークに関する一定の知識を身に付け、ネットワークアセスメントの発注や、通信契約の変更などについて事業者と適切な交渉ができるのではないかとしている。