楽天グループの人工知能(AI)への取り組みはトップダウンで始まる。代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、Eコマース大手の同社に最先端技術をいち早く導入する決意を固めて、カスタムAIソリューションを開発すべくOpenAIと提携した。
同社の子会社であるRakuten Advertisingで学習および開発(L&D)部門のマネージャーを務めるDebra Bonomi氏は、両社の提携がどのように実を結んでいるかを米ZDNETに語った。楽天はOpenAIと協力して、全社のスタッフ向けに「ChatGPT」の社内バージョンを開発し、三木谷氏は大いに満足しているという。
「三木谷は、AIによってすべてがひっくり返る、と楽天内の全事業部に伝えている」。Bonomi氏はこのように述べた。「三木谷は私たちの考え方を変えることに重点を置いている。この技術は組織を変えるだろう。注力する対象、注力する方法、そして職務内容をAIが変えていく」
新興技術の潜在能力を理解しているCEOがいることは、重要な出発点だ。しかし、AIから利益を得られるかどうかは、従業員がこのツールを受け入れるかどうかにかかっている。では、従業員のAI活用を支援して(生成AIの影響を恐れている者もいるだろう)生産性を高める最善の方法は何だろうか。
そこでBonomi氏の出番だ。L&D部門の責任者である同氏は、自身の部門の従業員800名がAIを受け入れて活用するための枠組み作りを任された。同氏はユタ州に拠点を置くELB Learningと協力して、基礎、認定、タスクという3段階のプログラムを構築した。このプログラムの成功は、それがL&Dの枠を超えて広がっていることを意味する。
「ELBと会議の予定を組んで、同社のフレームワークについてチームに説明してもらった」とBonomi氏。「これほど包括的なプログラムは見たことがない。今では他の多くのリーダーが参加を検討しており、認定を全社的に展開したいと考えている。私はさまざまな国のリーダーたちと協力して、このプログラムを組織全体に広めている」
Bonomi氏は、この3段階のトレーニングプロセスが楽天従業員のAIスキル向上にどう寄与しているかを説明した。
第1段階:基礎
生成AIは誰もが知っていると考えてしまいがちだが、Bonomi氏によると、現実は異なるという。多くの人がAIの基礎について学ぶ必要がある。
「AIとは何か。AIにはどのような種類があるのか。大規模言語モデルはどのような仕組みなのか。ChatGPTと他のツールは何が違うのか。全員が同じレベルになるように、これらすべてを盛り込んだ」
Bonomi氏のL&Dチームの基礎トレーニングは2023年後半に始まった。第1段階は、AIがもたらす機会と、倫理やセキュリティのリスクをスタッフに理解させるためのものだった。
プログラムの開始前は、78%の従業員がAIの使用を快く思っていなかった。現在では、86%がプロンプトエンジニアリングスキルを活用することに満足している。Bonomi氏はAI教育のプロセスを「旅」と表現する。
「つい先週、全員参加の会議を開催して、組織が歴史的にどのように作られてきたかを説明するスライドを作成した。組織が作られたのは、生き残るためだった」とBonomi氏は語る。
「だが、われわれはAIによってそのアプローチを逆転させようとしている。事業を立ち上げる目的は、成長と持続可能性になるだろう。その変化が何を意味するのか、そしてタスクがどのように変わるのかを考える必要がある」
第2段階:認定
AIを理解するための基礎を固めた一部の従業員は、これを足がかりとして第2段階に進んでいる。