デジタル時代の本人確認方法動向

犯収法/携帯法の見直しと、運転免許証のマイナンバーカード一体化

田上利博 (サイバートラスト)

2024-11-13 06:00

 マイナンバーカードをはじめとする身元確認証の偽造によって、携帯電話などの契約を不正に行う事件が発生したことは、記憶に新しいのではないかと思う。2024年5月、河野太郎氏(前デジタル大臣)は、偽造マイナンバーカードを使って本人以外によるスマートフォンの機種変更が対面店舗で発生した件などに触れ、「目視確認ではなくICチップの読み取りによる厳格な本人確認を推進する」と述べた。

犯罪収益移転防止法(犯収法)の見直し動向

 政府は、首相官邸が主導する「犯罪対策閣僚会議」において、2024年6月に「国民を詐欺から守るための総合対策」を公表した。これまで「オレオレ詐欺等対策プラン」「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」などに基づき官民一体で対策を講じてきたが、2023年度の詐欺被害は約1630億円と、前年から倍増している。近年SNSやキャッシュレス決済の普及などが進む中、これらを悪用する犯罪手口が巧妙化、多様化しており、詐欺被害が拡大している状況であると記されている。2023年3月17日の犯罪対策閣僚会議では、「本人確認の実効性の確保に向けた取り組み」として以下の内容が示された。

携帯電話や電話転送サービスの契約時の本人確認において、本人確認書類の券面の偽変造による不正契約が相次いでいることから、携帯電話不正利用防止法及び犯罪収益移転防止法等で定められている本人確認の実効性の確保のため、制度改正を含め、非対面の本人確認においてマイナンバーカードの公的個人認証機能の積極的な活用を推進する。
(出典:首相官邸「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」、PDF

 また、2024年6月18日の同会議では、「国民を詐欺から守るための総合対策」に預貯金口座の不正利用防止対策の強化などに当たり、本人確認方法について以下の内容が盛り込まれた。

犯罪収益移転防止法、携帯電話不正利用防止法に基づく非対面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類等は廃止する。対面でもマイナンバーカード等のICチップ情報の読み取りを犯罪収益移転防止法及び携帯電話不正利用防止法の本人確認において義務付ける。
(出典:首相官邸「国民を詐欺から守るための総合対策」、PDF

 「犯罪収益移転防止法」(犯収法)の見直し案をまとめると以下のようになるだろう。

※筆者調べ。「容貌の画像」とは、本人確認時に撮影された本人の顔画像
※筆者調べ。「容貌の画像」とは、本人確認時に撮影された本人の顔画像

 犯収法改正施行の時期については、現時点で明確に示されていないが、「携帯電話不正利用防止法」(携帯法)同様に本人確認方法について見直されているため、携帯法の改正施行時期と同時期になるのではないかと推測する。

 上表の「書類の画像+容貌の画像(本人確認時に撮影された本人の顔画像)『ホ』」と「書類の画像+銀行照会/口座確認『ト』」および「書類の画像+転送不要郵便『チ』」が今後廃止になる可能性がある。多くの金融事業者がこの方式を採用しているだろうが、廃止になれば、その他の本人確認方法に移行するしかない。今後の改正施行時期は不明だが、今の段階から「ホ」「ト」や「チ」以外の本人確認方法に移行することを検討するのが良いと思う。非対面での本人確認方式として、マイナンバーカードを用いた公的個人認証やIC運転免許証、在留カードの電子証明書を用いた方法はオンラインで完結できるため、最も有効な方法ではないだろうか。

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