SAS Institute Japan(SASジャパン)は5月11日、顧客間で構築されるコミュニティにおける隠れた関係性を分析できる新ソリューション「SAS Customer Link Analytics」の提供を同日より開始すると発表した。
SAS Customer Link Analyticsは、同社の分析系CRMソリューションである「SAS Customer Intelligence Suite」の一部として提供される。従来のCRMソリューションが行っていた顧客個人の特性分析ではなく、顧客とその関係者、および顧客間で構築されるコミュニティに関する情報を迅速に把握、分析し、マーケティングに活用できる点が特長という。
SASジャパン執行役員、ビジネス開発本部長兼プロフェッショナルサービス本部長の宮田靖氏は、消費者が企業の宣伝広告に対して持つ「信頼度」に関するリサーチ会社の調査結果を引きつつ、従来型の一般的な宣伝、広告に対する信頼度が年々低下している点を指摘。一方で、知人からのメールや他の消費者の評価やレビューといった「ソーシャルインフルエンス」が台頭してきており、企業もそうした状況に合わせて、ソーシャルインフルエンスの活用に乗り出している点に触れた。
「この分野においてSASは、コミュニケーションデータやトランザクションデータをソースとした高度な分析を行うことで顧客内に存在するコミュニティを発見し、各顧客の役割を高い精度で推定することができる。これにより、今までの統計解析手法だけでは不可能だった、より効果的なマーケティング施策が可能となる」(宮田氏)という。
SAS Customer Link Analyticsでは、データソースを元にした「コミュニティ分類」「顧客タイプ判定」「解約トリガー」「顧客の視覚化」といった機能を提供する。
まず、コミュニティ分類により、顧客の中からキャンペーンのポテンシャルが高いコミュニティを選出する。また、顧客タイプ判定では、「インフルエンサー」「ハブ」「フォロワー」「トレンドリーダー」といった、各顧客のコミュニティ内での役割を推定。商材を効率的に普及させる際の起点とすべき顧客の選出を行える。同様に、解約トリガー機能では、ネガティブなインフルエンスの影響を未然に防ぐために重点的に守るべき顧客の特定を行う。例えば、ある顧客の「解約」という行動が、その顧客が属するコミュニティ内で連鎖することを防ぐため、ある契約者が解約したことをトリガーに、その周辺のフォロワーに対して施策を打つといったことが可能になる。顧客の視覚化機能では、施策立案のために顧客の行動と「人間関係」をビジュアライズできる。
同製品の当初のメインターゲットとなるのは「通信事業者」だという。顧客間のコミュニティの特定や役割の判断のために利用できる「通話履歴」「メール履歴」「サービス購入履歴」等の膨大なデータ資産を所有しているのが理由のひとつで、実際に開発にあたっては、欧米アジア圏の移動体通信事業者との共同トライアルでの経験を生かしてきたという。
移動通信事業では、音声ARPUからパケット収入やその他新規の収入源への収益構造の転換が求められており、より効果的に新商材やサービスの購入を促すマーケティングの仕組み作りに対するニーズが強いという。実際にある海外の移動通信事業者では「コミュニティとそのターゲットを特定することで、そうでない場合と比べて端末推進で6倍、新料金プラン推進では10倍以上の効果があった」(SASジャパン、ビジネス開発本部CIグループ部長の高橋昌樹氏)とする。日本では、KDDIが同製品の採用を決定したことも発表されている。
大規模なログデータのハンドリングや高速処理が可能な点や、「SAS Customer Intelligence」との統合により、マーケティングのPDCAサイクルの中で「分析」と「実践」の連携が容易になる点が、SAS製品の強みであるとしている。また今後、通信事業者だけでなく、インターネットサービス事業者、Eコマース事業者、小売業者等に対する同技術の応用も検討していくという。
SAS Customer Link Analyticsの参考価格は約3000万円より。