そもそもERPとは何なのかを改めて考える

梅田正隆(ロビンソン)

2008-11-07 18:19

大不況時代にERPから暁光は見出せるか

 未曾有の信用不安による世界的な金融危機は、実体経済を巻き込みつつある。企業が経営の危機に直面するたびに、ERP(Enterprise Resource Planning)は経営の救命胴衣として期待されてきた。

 将来の見通しが厳しい時代に、取るべき対策がERPから見えるのか。生き残りをかけ、ERPに多額のIT投資をした企業は、それに見合った価値をどうすれば生み出せるのだろうか。本連載では、ERPについて再考していきたい。

 まず、ERPとは何なのか改めて振り返ってみよう。1990年代半ば、国内においてはERPはしばしば、BPR(Business Process Re-engineering)とセットでその価値を語られることが多かった。当時、Michael HammerとJames Champyが提唱したBPRが経営再建のキーワードとなり、ERPがBPRを実践するための手段の1つとして注目された。

 だが冷静に考えれば、BPRとERPは改革のアプローチが異なっていることに気づく。BPRは、経営体質を大改造するために、現在のビジネスプロセスを抜本的にデザインし直すアプローチであるはずだ。これは過去の業務構造を捨て、一から再構築することを意味する。

 一方、ERPは先進的企業から学んだベストプラクティスを、現在の業務に適用することを前提として生まれている。ERPを導入する際に、しばしばどのベストプラクティスを自社に取り入れるべきか判断するためのフィット&ギャップ調査を行うが、この時点ですでにBPRからは離れ、過去のビジネスプロセスを改善あるいは修正する方向性が強くなっている。

 実際のところ、90年代にいち早くERPを導入した企業の多くは、メインフレームからオープンシステムへの移行と同時に、グローバルスタンダードを自社のビジネスプロセスに取り入れることが大きな狙いだった。グローバルスタンダード、後のベストプラクティスである。

 パッケージ化されたERPシステムの導入によって、業務システムを統合するという作業における手間とコストを大幅に省くことができたが、それだけでは業績の回復や収益の拡大にはつながらなかった。ビジネスプロセスを取り入れただけなのだから、「競争力」を生まないのは当然だった。データから判断を下すのは、コンピュータではなく、いつも人間である。

ERPシステムの可能性と限界

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

関連記事

関連キーワード
ビジネスアプリケーション

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  2. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  3. セキュリティ

    経営陣に伝わりづらい「EDR」の必要性、従来型EDRの運用課題を解決するヒントを解説

  4. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    中小企業のDX奮闘記--都市伝説に騙されずに業務改善を実現したAI活用成功譚

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]