先週のACCUカンファレンスでJames Coplienが面白いことを言っていた。例えば同氏は次のように述べている:「市場でチャンスをつかめるのは、その市場に1〜3番手で参入した先発組の企業だけだ。品質よりもタイミングが重要である。というのも、人々は、最良のものではなく、最初に世に送り出されたものを買うからだ。消費者は、年中不具合を起こすナンセンスなシステムを我慢して使い続けることを苦にしていないようにさえ見える」
部分的には、彼の言っていることは正しい。市場に一番手で乗り込んだ者は、ネットワーク効果の恩恵に預かって市場を独占し(ソフトウェア市場などはその典型だ)、その地位を維持するのに有利な材料を手にすることができる。なぜなら、このような市場における製品の価値は、それを利用する人の数で決まるからだ。2番手や3番手として市場に参入した者にはチャンスがないなどと言うつもりはない(Linuxだって先発組でないにも関わらず、良い位置につけている)。でも、後発組にとって有利な地位を確保することは、私が農産物直売所でオレンジを売るよりも難しいことである。
私が異議を唱えたいのはCoplienの発言の後半、消費者の価値判断に関して同氏が暗に述べた部分である。消費者は、必要でない製品をわざわざ購入したりはしない。それが、市場初の製品であってもだ。では、他社の商品が出るまで待てない場合、彼らはどうするだろうか。あるいは、自然災害にあった人々は、非常食を拒絶して、パリのレストランからおいしい食事が届くまで待つべきだろうか。早期に販売された製品には、価値がないのだろうか。投入されたばかりの新型車の方が、発売から3〜4年たった車よりも不具合が多い。だからと言って消費者は、あと何年か車の購入を控えるべきだろうか。
消費者もばかではない。彼らは自分たちのニーズを最もよく満たすという意味で「ベスト」な製品を選択し、購入する。ベータマックスは、技術的な観点からはベストだったかもしれないが、コンテンツの使いやすさや、製品ラインごとの互換性、製品の選択肢などの面で(VHSより)劣り、ネットワーク効果の恩恵を享受することができなかった。その結果、ベータマックスの立場はどんどん不利になった。技術を何よりも重視する人にとってベータマックスはベストな選択肢だったかもしれないが、一般の消費者にとってはベストではなかった。一般の消費者にとって、そこに搭載される技術など問題ではなかったのだ。
同じ技術でも、セキュリティは重要だ。消費者もこのことに気付いている。そして、さらにインターネットの出現で、市場の意識は変化した。システムがネットワークに接続されていなかった頃は、セキュリティのことをさほど心配する必要もなかった。念のため、セキュリティリスクがゼロではなかったことを、ここに書いておこう。事実、1990年代初頭には、フロッピーディスクを介してウイルスが感染を広げたこともある。しかし、ネットワークからは独立したシステムの方が安全だったことは間違いない。
現在、Microsoftはセキュリティに何十億ドルもの資金を投じている。同社は、Windows XP Service Pack 2の開発に、Longhornプロジェクトに従事していたプログラマを振り向けたほどだ。なぜ、Microsoftはここまでしたのか、その答えは消費者にある。消費者のセキュリティを重視する姿勢が、Microsoftを突き動かしたのだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ