参照実装を至上のものにしたいと思うなら、Sunは商標のライセンス条件を緩和すべきだ。そうなれば、Javaを取り巻く環境は、IBMが追い求めているもの近づくだろう。IBMが欲しがっているものの中でも、テストと商標ライセンス料を無くすことは、同社にとって長年の望みだった。想像でしかないが、Sunがすぐに商標ライセンス条件を緩和することはないだろう。だが、IBMがJavaの契約を10年間延長し、Solarisをサポートすることにしたことから推し量ると(しかも、SunとIBMの幹部がJavaOneであんなに親しくしていたことから考えると)、Sunはある程度妥協しなければならなかったに違いない(鼻が利くニュース屋にとっては、ここが出番である)。
もう1つ、Sunの参照実装が広まるかどうかに影響を与えるのは、Sunがこの実装に適用したオープンソースライセンスであるCDDL(Common Development and Distribution License)だ。CDDLは、幅広い信頼を獲得したMozilla Public Licenseをベースとした優れたオープンソースライセンスだと考えられているが、GNU GPL(General Public License)ではないし、みんながCDDLを気に入っているわけでもない。IBMはついこの間GlueCodeを買収したばかりだが、GlueCodeチームはApacheプロジェクトのGeronimoをベースにしたソフトの開発を行っている。IBMがこれをまったく別のコードベースに移行してライセンスを取得し直すことはありえないだろう。また、GlueCodeを買収したすぐ後に、IBMがJava EEの参照実装を至上のものとして、まつり上げることもありえない。こう考えると、私は、IBMの思惑を掘り下げたコラムを書く必要があるかもしれない。Java EE 5参照実装がオープンソース化されたことによって、GlueCode買収の価値が下がってしまうかどうかは見てのお楽しみだ。だが、このことがSun幹部の頭の片隅にあったことは間違いない。