海外に逆襲するソフトウェア企業--サイボウズ「情報共有ソフトなら米国勢に勝てる」 - (page 2)

インタビュー:西田隆一(編集部)文:長野弘子

2005-07-28 20:18

--その方向性の答えが、サイボウズ・ラボとして集約されたのですね。「世界標準となるソフトウェアの開発」を目指すとありますが、世界に通用するプロダクトを作りたいというのがやはり根幹にあるのでしょうか。

:それ以外には何もないと言ってもいいくらいです(笑)。目標は、米国技術者のなかでも「サイボウズのこの製品はいいよね」と言われるようになることです。現状では、弊社のことを知っている米国技術者は極めて少なく、製品を購入した顧客しか我々のことを知らない状態です。

 そこで、マーケティングを強化して認知度を高めるといったアプローチではなく、プロモーションのやり方を考える必要があると思います。儲かるかどうかはさておき、ブログで話題になったり技術者間で噂になったりすることが重要です。例えば、オープンソース・ソフトウェア(OSS)化することで技術者のプロジェクト参加を促すといった方法もひとつです。

「海外の技術者にも知ってもらいたい」畑慎也CTO

 もちろん、海外向けだとコミュニケーションはすべて英語になります。8月から私を含めた常勤3人で業務を開始しますが、私以外の2人は英語が堪能で、非常勤のメンバーもほぼ英語に強い人材を揃えています。ホームページも基本的には英語中心にする予定です。ただ英語力よりは開発力ですので、グーグル研究開発センターに英語力がなく入れなかった人、歓迎します(笑)。

--サイボウズの専門分野としての情報共有ソフトは、文化の違いによって影響されやすいアプリケーションとも言えます。こうした文化の違いに左右されるアプリケーションよりは、独自で開発した「CyDE2」などの開発フレームワークの方が比較的、海外市場に受け入れられやすいのではないでしょうか。

:業務に特化したアプリケーションはローカライズが必要になってくるので、ローカライズに特化しないところから始めたいですね。例えば、ブログソフトの「Movable Type」は汎用的に使え、文化にも依存していない上手いアプリケーションだと思います。最初の突破口はこうした部分から始めたいと思っています。

 開発フレームワークは、アプリケーションの開発過程で必要になるものですので、最初から作ろうと思って開発されるわけではありません。CyDE2もまた、ポータル型グループウェア「サイボウズ ガルーン 2」を開発するためのフレームワークとして作り、ガルーン 2を開発するうえでさらに必要な要素を追加していったものです。

--ラボで利益を上げることは考えていないとのことですが、やはりビジネスモデルを考える必要もあるのではないでしょうか。

青野:ラボは、サイボウズの類似製品を開発するのではなく、独立した事業体としてまったく別のプロジェクトを手がける予定です。最初は会社名も分けようかと思ったくらいです。もちろん、素晴らしいものが生まれた時にはサイボウズで製品化する可能性があります。

 ビジネスモデルに関してですが、ラボでは利益を重視していません。その理由は、いまのサイボウズの売上高・利益構造からすれば技術者を20人ほど採用しても大きな投資ではなく、リスクが小さいからです。

 普及させることでビジネスモデルを構築できるというのは、Linuxディストリビュータ最大手の米Red Hatと、MySQLを販売する米MySQLがすでに証明しています。Red Hatは上場後、ビジネスモデルが確立できずに先細りしてしまい心配しましたが、エンタープライズ向けのサービスを提供してから黒字化しています。MySQLにしても、個人利用が無料で商用を有償とする「デュアルライセンス・モデル」で成功しています。

 普及すれば、それからビジネスモデルを作ることは可能ですので、ラボではまず普及できるソフトウェアを世の中に出すことに専念します。

--最近は、中国やインド、東欧などで新たなソフトウェア産業が興っていますが、その脅威はどう感じていらっしゃいますか。

青野:彼らは自国の市場が小規模なので、最初から世界を目指しています。業界もこれから成熟していきますし、そう簡単には勝負はつかないことは事実です。しかし、例えばトヨタ自動車が米GMに助け舟を出しながらも、さらにシェアを伸ばしているように、我々にも勝算があると思っています。その勝算の理由は、サイボウズが情報共有にこだわっている会社だからです。

 私の仮説ですが、日本人は情報共有が得意と思います。なぜ、サイボウズが日本でロータスやマイクロソフトのグループウェアと互角に戦えているのでしょうか。

 Exchangeとそのクライアントソフトである「Microsoft Outlook」で構成されるグループウェアの仕組みは、他人のスケジュール確認を行うには何度もクリックする必要があります。これは、米国での仕事の進め方が個人中心であることに起因していると思います。

 それに対して、サイボウズのグループウェアは、1クリックで他人のスケジュール確認ができます。日本人は情報を共有した方が便利だと判断したのだと思います。つまり、日本人はOutlookでのスケジュール管理に「ノー」と言ったんですね。

 今後、企業の生産性をより高めたいならば、チームワークを高めるべきであり、米国式の個人中心の仕事の進め方は長い目で見ると廃れていくと思っています。情報共有の分野であれば、我々が一歩先を行けると思っています。我々はソフトウェア分野で第2のトヨタを目指しています。

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