自宅からオンラインショッピングを楽しむことは、いまやほとんど当たり前となっているが、IBMは現在、ウェブを使った買い物を実店舗に取り込みたいと考えている。
IBMは、小売業界向けの標準仕様の決定機関に、ある仕様を提出した。この仕様が、広く普及すれば、店内のキオスク端末や買い物カートなどをウェブアプリケーションに接続するための標準的な方法が提供されることになる。IBMによると、この技術によって、消費者は実店舗で買い物をする際により多くの情報を手にすることになり、現在とは劇的に異なる買い物を経験するようになるという。
全米小売業協会(National Retail Federation:NRF)の下部組織である小売業技術標準協会(Association for Retail Technology Standards:ARTS)は、業界標準仕様の開発を目的に、IBMの提案を受諾し、憲章を制定した。
この技術仕様が小売業向けの端末やアプリケーションに採用された場合、消費者は、買い物をしながら、商品についての情報を売り場や携帯端末から受け取ることが可能になる。IBMの顧客であるStop & Shop Supermarketsは、ボストン地区にある一部の店舗で同システムの実験を既に開始している。今回提案された標準規格は、このStop & Shopのシステムを元につくられた。
「ウェブアプリケーションが持つ能力を、いろいろな端末と組み合わせることで、これが買い物という行為を本質的に変えることになる」とIBMでリテールストア部門の最高技術責任者(CTO)を務めるHollis Poseyは、CNET News.comに語った。
現在このサービスを利用する場合、顧客は「Stop & Shop Buddy」と呼ばれる端末を使用する。この端末は、8.5インチのディスプレイを装備し、通常の買い物カートに差し込んで利用できるようになっている。
利用客は、いつも買い物に使うカードを読み取り用のスロットに通して、Stop & Shop Buddyから買い物リストを呼び出せる。この買い物リストは、ウェブ経由で送信したり、過去の買い物履歴から作成することができる。そして、リストに含まれる商品の在処を示した店内の地図が端末のディスプレイ上に表示される仕組みになっている。
また、利用客が商品をスキャンすると、それについての説明や栄養分、レシピが表示される。また、デリから食料品を注文することや、キオスク端末でワインの品揃えを調べることも可能だ。
Stop & Shopのアプリケーションで実現された重要な技術的飛躍は、店内で使う端末とウェブとを橋渡しする部分にある。提案された標準仕様により、小売業向けの装置メーカーやアプリケーション開発者らは、店内にある端末間で情報を共有するための、共通の手段を手にすることになる。
「これまでは、各端末やアプリケーションごとに独自の方法で実装されていたため、他のサービスと統合するのが難しい状態になってしまっていた」(Posey)
小売業界向けの標準ができれば、ウェブアプリケーションからデータを引き出して活用する小売り用アプリケーションの開発に拍車が掛かるとPoseyは言う。こうしたシステムが実現されれば、たとえばセールスマンが客先にいても、デジタルカメラのような複雑な製品についての豊富な情報を活用できるようになる。また、セールスマンが顧客との販売プロセスを通じて使えるアンケートのような仕組みも想定されている。
なお、IBMではこの仕様の提出にあたり、関連する知的所有権をARTSに譲渡した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ