“Think Liquid.”に基づくSOA実現の戦略を語ったBEAのチュアングCEO

山下竜大(編集部)

2005-09-28 21:17

 米BEA Systemsは9月27日〜29日の3日間、カリフォルニア州サンタクララにあるサンタクララコンベンションセンターにおいて、同社のユーザーカンファレンス「BEA World 2005」を開催する。その初日となる27日、基調講演に米BEA会長兼CEO(最高経営責任者)であるAlfred S. Chuang氏が登場。同社のキャッチフレーズであり、Chuang氏の信念でもある“Think Liquid.”(流動的に考えよう)に基づく今後の戦略について紹介した。

米BEA会長兼CEOのAlfred S. Chuang氏

 “Think Liquid.”とは、顧客のためにエンタープライズITを流動化させ、簡素化することで、生産性を向上し、TCO(総保有コスト)を削減するためのBEAの信念だ。エンタープライズITを流動化させることで、ビジネスの変化に柔軟かつ迅速に対応する液体のようなITシステムを実現できる。つまり、BEAにおけるSOA(サービス指向アーキテクチャ)戦略が“Think Liquid.”だといい変えることができる。

「BEAはこれまでも、顧客のITインフラを簡素化し、生産性を向上するためのソフトウェア製品群を提供してきた。今後10年間においても、顧客の投資を保護し、顧客が常にエンタープライズITにおける進化の最先端に位置することができるソリューションを提供し続ける」とChuang氏は言う。

 このようなBEAの信念は、最新技術であるAquaLogicやWebLogicはもちろん、TuxedoやWebLogic Commerce Serverなどの製品でも同様に適応されている。その一例としてChuang氏は、「中国のクレジットカード会社であるチャイナ・ユニオンペイでは、1秒間に1万3000トランザクションが処理されるSOA対応システムの中核にTuxedoを導入した」ことを紹介した。

「BEAは、絵に書いた餅ではなく、実際に動くSOAを実現できるソフトウェア製品をすでに提供できる」とChuang氏。さらに同氏は、「BEAは、Javaだけでなく、.NETやOracle、IBM、SAP、レガシーシステム、オープンソースなど、さまざまなプラットフォームをサポートできるのが最大の強み」であることを強調した。

「重要なのは、ハードウェアやOS、データベースなどに依存することなく、アプリケーションを容易に実装できるSOA対応の包括的なプラットフォームを提供すること。AquaLogic、WebLogic、Tuxedo、すべてSOA対応済みだ」(Chuang氏)

SOA実現のための4つの取り組み

 BEAでは、SOAの実現には、テクノロジーの観点だけでなく、ビジネスの観点からも戦略を持つことが必要であり、ITリーダーとなる、経営者やITアーキテクト、開発者、ITマネージャーのすべてが一丸となることが重要だとしている。

 Chuang氏は、「BEAでは今後、経営者、ITアーキテクト、開発者、ITマネージャー、それぞれに焦点を当てたやり方でSOAを実現するための取り組みを展開していく」と言う。「ITリーダーの焦点は、それぞれに異なっているが、最終的に目指すゴールは同じもの。SOAが成功するか、失敗するかは、ITリーダーにかかっている」とChuang氏。

1)経営者の視点

 経営者の視点では、常に投資に対する結果が求められる。つまり、ITに投資した場合、ビジネスに価値を見いださなければならないほか、顧客が要求するものを迅速に提供することが要求される。

 「BEAでは、経営者に対し、ビジネスの現状を見えやすくするためのテクノロジーを提供する。ビジネスがどの方向に向かっていて、どのような意思決定がなされ、何を実行しなければならないのか、そしてそれをいかに迅速に実行するかを明確にできる」(Chuang氏)

 例えば、あるクレジットカード会社で、Webサイトからの新規顧客の申し込みが少ないことに気づいた場合、WebLogicのBAM(ビジネス・アクティビティ・モニタリング)機能を使用することで、“個人情報をWebサイトに入力したくない”というユーザーの多くが途中でトランザクションを破棄していることが分析ができたとする。

 そこで、Webサイトから直接コールセンターに接続し、音声により自然に個人情報を登録できる仕組みをWebLogic Communication PlatformのVoIP機能により実現することで、Webサイトにおけるトランザクションの廃棄率を1%減らすことができるかもしれない。

 Chuang氏は、「クレジットカード会社では、新規加入者が1%増えただけでも膨大な利益を期待できる可能性がある。これにより経営者の立場で、IT投資の効果を明確にすることができる。1度、Webサイトから離れてしまった顧客をそのサイトに呼び戻すことは至難の技だ」と話している。

2)ITアーキテクトの視点

 「BEAの調査では、ITアーキテクトは“最新の製品をいち早く市場に投入してほしいと思っている”いう調査結果が出ている。私も以前はアーキテクトを名のっていたので、アーキテクトが最新のセクシーな技術が大好きなのはよく知っている」とChuang氏は笑う。

 ITアーキテクトはビジネスのビジョンとITの戦略の両方に関わることが必要であり、実際にシステムを実装する役割も持っている。システムと技術とサービスの3つを組み合わせて、はじめてITアーキテクトの仕事といえる。BEAでは、このようなITアーキテクトを満足させる製品群も提供する。

 この仕組みを使用することで、例えば新しいSOA対応のサービスを構築する場合、そのサービスがすでに存在するかどうかを事前に確認することが可能。無駄なサービスの開発を防ぎ、生産性を向上できるだけでなく、最大限にシンプルな構成のシステムを実現することが可能になる。

3)開発者の視点

 これまでBEAが最も注力してきたのが開発者との強い信頼関係だ。Chuang氏は、「BEAは、開発者が何を求めているかを敏感に察知できる会社だと自負している」と言う。

 現在、システム開発の現場では、Javaを中心としたオープンソースのフレームワークを活用することで開発生産性を向上させている。BEAでは、エンタープライズ向けJavaをより使いやすいものにするために、オープンソースのフレームワークを使用して開発したアプリケーションを、WebLogic Serverに実装できる仕組みを提供する。

 「開発者は、より使いやすいツールを使用して、仕事を早く高い精度で終わらせたいと思っている。BEAの調査では、開発者の72%がオープンソースのフレームワークを使用して開発を行っている」とChuang氏。

 そこでBEAでは、オープンソースと商用ソフトをうまく組み合わせることで、効果的かつ効率的なシステム開発を実現する“ブレンド・アプリケーション”という取り組みを展開。開発者の要求に応えていく計画だ。

 例えば、WebLogic Serverを拡張することで、J2EEで開発されたアプリケーションはもちろん、オープンソースのSpringフレームワークで開発されたアプリケーションも実装することが可能。このとき、Springオブジェクトの詳細を確認することもできる。BEAでは同日、WebLogic Serverに対応したオープンソースの認定プログラムを開始したことも発表した。

4)ITマネージャーの視点

 IT環境に問題が発生した場合に最も責任を負う立場にあるITマネージャーは、より少ないコストで、最大の効果を得るためには何が必要かを常に考えなければならない、重要なポジションにある。「コストを抑えながら、ITを企業の戦略の一部として推進していくために、BEAではSOAを実現する高品質な製品を低価格かつ信頼性の高い状態で提供する」とChuang氏。

 例えばBEA WebLogic Server 9.0では、システムを止めることがないのはもちろん、アプリケーションを稼働させたままアップグレードを行うことが可能。これは、ハードウェアのホットスワップ機能をソフトウェアに応用したような機能といえる。

「90年代にハードウェアのホットスワップ機能を始めて見たとき、これは革新的な機能だと思った。WebLogic Serverは、この技術革新に通じるホットスワップが可能な初めてのソフトウェアだ。これは、レースカーのエンジンを、レース中に交換するようなものだ」とChuang氏は言う。

 同氏は、「BEAでは、今後も顧客に自由を与えながら革新できるソリューションを提供していく。IT革新は始まったばかりであり、未来はまだまだ明るいものだと信じている。複雑なビジネス環境を簡素化することこそがBEAの信念だ」と講演を締めくくった。

BEA World 2005が開催されているサンタクララコンベンションセン ター

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