ASPからオンデマンドへ、そしてSaaSへ

谷川耕一 2006年07月18日 18時05分

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 SaaSと書いて、「サース」あるいはアルファベットをそのまま「エス・エー・エー・エス」と読む。あの恐ろしいSARS(重症急性呼吸器症候群:サーズ)と同じ発音はしないようだ。SaaSとは、「Software as a Service」の略称のこと。最近にわかに注目を浴びつつある、ASP(Application Service Provider)から発展したIT業界の最新キーワードの1つだ。

はじまりはASPと呼ばれていた

 ASPという言葉が世の中に登場したのは、インターネットバブルまっただ中の1990年の終わり頃のことだ。当時のASPサービスは、データセンターのサーバー上に置かれたソフトウェアにインターネット経由で接続し、アプリケーションを利用した分だけ料金を支払うというもの。ネット関連の新たなビジネスということもあってか、マスコミもこぞってASPを取り上げ、あっという間に多くのベンダーが市場に参入してきた。

 ところが市場参入が相次いだにもかかわらず、ユーザーへの普及は今ひとつ。その理由として、当時は高速なインターネット回線がかなり高価であったこと、提供されていたアプリケーションの性能や機能が満足するレベルに至っていなかったことが挙げられる。そのため、「これからはASPの時代」とあおり立てたマスコミの思惑通りに事は運ばず、新規参入した多くのASPベンダーは早々に市場からの撤退を余儀なくされた。

 <当時ASPで提供されていたのは、グループウェアあるいはショッピングサイトなどで、いわゆる業務系アプリケーションは対象となっていなかった。基本的にカスタマイズはできず、ベンダーが提供するままの画一的な使い勝手で利用するしかなかったのもデメリットの1つだ。/p>

ASPからオンデマンドへ

 オンデマンドという言葉は、現在のIT業界では珍しいものではない。もともとは、「オンデマンド印刷」などのように注文や要求に応じて、随時必要なサービスを提供することを意味する。これが、コンピュータシステムに対して用いられると、ITサービスをユーザーの要望に応じて柔軟に提供することになる。アプリケーションをユーザーの要望に応じて提供するサービス、つまり、画一的なものしか提供できなかった旧来のASP型のサービスから、ユーザーの要望に応じてカスタマイズなど柔軟に対応できるように進化させたものを「オンデマンドサービス」あるいは「オンデマンドアプリケーション」と呼ぶようになった。

 このオンデマンドサービスで成功しているのが、Salesforce.comだ。Salesforceが対象としたのは、CRMの業務アプリケーション。顧客データベースを利用した営業支援システムやヘルプデスク業務支援などのアプリケーションを、月額数千円という低価格で提供しユーザーを増やしてきた。2000年以降のADSLや光回線の普及で高速回線のコストが下がったことや、低価格で信頼性の高いハードウェアの登場もオンデマンドサービスの普及を後押しすることになる。

 オンデマンドサービスの最大のメリットは、構築、導入に時間がほとんどかからないことだ。導入を決めて契約さえ済んでしまえば、明日からでもアプリケーションを利用できる。また、カスタマイズが可能なためユーザーの業務のやり方に合わせた画面や処理が実装できること、初期コストを抑え、部門などの小規模からトライアル的に導入して順次採用を拡大できることなどがメリットとして挙げられる。

 さらに、システムを所有しないメリットも大きい。昨今の情報システム部における多くの仕事は、システムを安全かつ信頼性の高い状態に維持し続けること、つまりシステム運用管理に多大なコストと時間を費やしているのだ。24時間365日の稼動が当たり前のシステムでは、頻繁に出されるセキュリティパッチを当てたり、パッチ適用後のシステムをチェックしたりといったことが頻繁に発生し、人的ミスが許されず時間的な制約のなか苦労も多い。オンデマンドサービスならば、情報システム部はこれらの運用管理の悩みから解放されることになる。

 とはいえ、ITにおける問題解決に対しオンデマンドサービスが現状でのベストな解決策かといえばそうともいえない。現状では初期のASPで提供されていたグループウェアやECサイト、Salesforce.comが提供しているCRMなどがオンデマンドサービスとして提供されている。そのほかの基幹系業務である会計システムやサプライチェーンシステムなどは、オンデマンドサービスとして十分に準備されてはいない。

 結局のところ、CRMなどの一部のITシステムだけをオンデマンド化し、残りは従来どうりユーザーの手元でシステムを構築、導入し運用管理することになる。さらにカスタマイズが可能とはいえ、あらゆるユーザーの要求に応えられるわけもなく、なんらか業務のやり方をオンデマンドサービスのアプリケーションに合わせる必要も出てくる。

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