I/O仮想化の成熟度は他の追従を許さないイージェネラ--特集:ブレードサーバ市場を探る - (page 2)

渡邉利和 2007年06月13日 08時00分

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 I/Oがシャーシ側に移されたことで、対外接続のためのコネクタはシャーシに集約され、個々のブレードに対して配線を行う必要がなくなる。このため、高密度でサーバを集積した代償として狭い空間に大量の配線が集まるという問題が軽減される。さらに、ブレードを交換した際にI/O部分が持つ物理アドレス(イーサネットのMACアドレスやSANのWWW:World Wide Name)が変わってしまい、設定変更の必要が生じるという問題があるが、これは仮想化されていることで完全に解消される。

 この設計では、I/Oが個々のサーバで直接処理されるのに比べ、シャーシ側に大きな処理能力が必要となる。つまり、シャーシがボトルネックにならないように充分余裕を持った性能が必要になる。さらに、当然だが仮想化ソフトウェアの支援が不可欠だ。シャーシが受け取ったI/Oリクエストがどのサーバブレードに対応するものかをシャーシ側で判断し、適切な宛先に振り分ける処理が必要となる。イージェネラの技術的な優位性は、このI/Oの仮想化技術において他社に先行して実績を積んでいることだ。

第3世代ブレードとの競合

Manca氏 EgeneraでCTOを務めるPete Manca氏

 I/Oの仮想化は、運用管理負担の増大に対する解決策として、各社が一斉に実装に向けて取り組みを開始している。中でも、Hewlett-Packardは既に自社のブレードサーバを「第3世代」と位置づけており、I/Oの仮想化技術として「HP Virtual Connect」を投入している。イージェネラのアーキテクチャの設計者でもあるManca氏もVirtual Connectには注目しているようで、わざわざVirtual Connectを取り上げて自社の技術との比較を行なった。

 HP Virtual Connectについてはここで詳細に説明することは避けるが、端的にいえば「各ブレードサーバのI/Oが持つ物理アドレスを書き換え可能として一括管理することで、ブレードの交換時にも物理アドレスの変更が生じないようにできる」技術だといえる。「イージェネラのI/Oの仮想化がI/Oの機能そのものを仮想化しているのに対し、HP Virtual Connectはいわば“物理アドレスの仮想化”であり、まだイージェネラが実現しているレベルの仮想化は実現できていない」というのが同氏の見解だ。

 ただし、イージェネラにも1点だけVirtual Connectに及ばない点があるという。それは、「I/Oのレイテンシ(遅延)が相対的に大きい」点だ。物理アドレスの書き換えでは、設定時に一度書き換えを行なってしまえば、以後のアクセスは全く影響を受けることなく実行できるが、イージェネラのアーキテクチャでは、I/Oが実行されるたび、たとえばネットワークではパケットの1つ1つがすべて仮想化による処理を受けることになり、この点が遅延の増大に繋がる。

 しかし、Manca氏にさらに詳しく確認してみたところ、「厳密に比較すればレイテンシが大きいのは確かなので、公平を期すためにそう説明しているが、あくまでもレイテンシだけの話で、速度や帯域幅では全く同一のレベルとなる。また、レイテンシが大きいと言っても、実際には1%程度のものだ。サーバを使用しているユーザーやアプリケーションがそのレイテンシによって影響を受けることは皆無だと断言できる」という。

新アーキテクチャによる新たなコンピューティング

 一般的なブレードサーバが「安価に高密度実装サーバを」という狙いを持つのに対し、イージェネラのブレードサーバは、「大量のプロセッシングリソースを最小限の運用管理コストで利用可能にする」という全く異なる市場に向けて提供されている。このため、ブレードサーバの市場としてまず思いつくウェブフロントでの利用は想定されておらず、ミッションクリティカルな領域をターゲットとしている。

 この市場での優位点は、仮想化され、冗長化されたコンポーネントのプールを背景とした高可用性と、高度な仮想化技術による運用管理コストの低減だ。運用管理負担を軽減できるということは、設定ミスなどに起因するトラブルを未然に回避できるということでもあり、さらなる信頼性向上に繋がる。実際にこうした特徴が評価され、金融業界などの大規模ユーザーを中心に導入されている実績があるが、今後は通信、公共、製造などの分野にも積極的に進出していくという。ただし、ミッションクリティカル向けという基本的な性格は変わらず、このため競合相手も他社のブレードサーバではなく、むしろ現在RISC-UNIXやItaniumサーバの置き換えを狙うとしている。

 アーキテクチャも対象市場も異なるため、他のブレードサーバ製品とは直接比較しにくいが、サーバの仮想化の利用が拡大することで管理対象の数が増加し、運用管理負担がさらに高まりつつある現状を考えると、イージェネラの取り組みは今後のサーバが進むべき道を明確に示していると考えられる。市場投入がやや早すぎたきらいがあったが、ここに来てようやく市場の状況やユーザーの意識がイージェネラに追いついてきた感もある。今後再びイージェネラの技術に注目が集まることが期待される。

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