Oracle Database 11gは30年に渡るRDBMS開発の集大成
日本時間の7月11日の深夜、オラクルは4年ぶりのメジャーバージョンアップとなる「Oracle Database 11g」の発表会をニューヨークで開催した。同社が30年間に渡ってリレーショナルデータベース製品に施してきた革新の集大成となるOracle Database 11gには、400を超える新たな機能が搭載され、延べ1500万時間におよぶテストを経て市場に投入される。
2006年11月にサンフランシスコで開催されたOracle OpenWorldでベータテストの開始が発表されたものの、XML関連機能の強化やLOB(Large Object)データなど非構造化データを扱う高速なOracle Fast Filesといったほんの一部機能が披露されただけで、その詳細はベールに包まれたままだった。今回の発表により、10gから11gに乗り換えるだけでより可用性、信頼性を高め、高速化する機能が多数あることが明らかになった。
新たな機能が11gへの移行を促す
とはいえ、「Oracle Database 10g」も十分に成熟したデータベース製品であり、移行の手間をかけてまで既存ユーザーが11gへ移行するかという疑問もある。そのため移行のペースは従来より遅いのでは、というアナリスト等の声も報道されている。アジアパシフィック地域のプレス向けのQ&Aセッションにおいて、データベースサーバテクノロジのSVPであるAndy Mendelsohn氏はこの件に対し、「Oracleのユーザー会の調査では、35%が1年以内に移行する計画をもっており、さらに50%以上が2年から3年で移行を計画している。これは従来の2倍以上のペースだ」という。
既存顧客が11gへ移行するきっかけは何かという問いには、「インフラの変更がそのタイミングになるだろう」とMendelsohn氏。インフラの変更で効果を発揮する新機能がReal Application Testingだという。これは、サーバやストレージなどのハードウェアアップグレードや、シングルサーバからOracle Real Application Clustersへの移行などインフラ環境の変更が発生した際の、既存アプリケーションの新環境での検証と移行の手間を大幅に削減する機能だ。既存システムにおける実際の利用状況をSQLレベルで記録し、それを新たなテスト環境に適用してテストできる。これにより、数カ月かかっていた移行作業が、10日程度に短縮できる場合もあるという。
「ベータテストに参加しているすべての顧客から、このReal Application Testingの機能を活用したいという評価を得ている」(Mendelsohn氏)
災害対策を考えている企業にも11gは有効だ。従来からOracle Databaseには、Oracle Data Guardという遠隔地にスタンバイ環境を構築して災害対策を行う機能があったが、11gではこのスタンバイ環境のリソースを眠らせておくのではなく、バックアップや参照系のレポーティングなどの処理に活用できる。さらに、Data Guardのスタンバイサイトを利用して、オンライン状態でパッチを適用したりアップグレードしたりすることも可能となった。この機能によって、移行作業の負荷は大きく削減できる。